≪二節;姫君の涕(壱)≫
〔この国の、太后とともに、重篤である国王を看護していた者は、
奥の手を行使したことにより、疲れ果てて安らかな眠りについていました。〕
ア:・・・・・・・。(すやすや~)
ソ:――――・・・。
へ:・・・今は、そっとしておいてあげなさい。
ソ:・・・はい―――
それにしても、女禍様も、なんとも思い切ったことをするものです・・・
へ:しかし―――あんな気弱な面を見せられたのも初めてだ・・・
しばらくは、レゾンデートルを回復させるのにも時間がかかるだろうし・・・
それまでは、そっとしておいてあげるんだ―――
〔病床についているヒョウの横で、椅子に腰掛けながらうつ伏せになって休むアヱカ・・・
それは、医師とその助手の弁により、そうならざるを得なかったことが語られ、
今はどちらも安静にしておくこととしたのです。
そして、彼らも急場で駆けつけたこともあり、救命の材料の多くを持ち合わせていなかったため、
その調達をするために、ヘライトスだけをウェオブリに残し、ソシアルは自分たちの治療院にそれらをとりに帰ったのでした。
それからしばらくして―――国王の容態はどうであるのかを知るために、病室に見舞いに来た者が・・・
しかしそれは、同時にある報告を持ってきた、録尚書事であるあの人物だったのです。〕
婀:―――失礼いたします・・・。
ア:・・・あっ、すみません―――少し寝入ってしまいました・・・
婀:・・・ご容態のほう、安定しておるようですな―――
ア:あ・・・はい、おかげさまで―――
婀:それはよかった―――・・・
時に姫君―――
ア:はい、なんでしょう。
婀:少し・・・お話しがあるのですが―――よろしいですかな。
ア:わたくしなら構いませんが・・・ここは病人のおられる場所、それで差し支えなければ・・・。
婀:典医長殿―――
へ:―――いいでしょう、ここは私が変わります。
どうぞ隣室をお使いになってください。
〔誰かが入室してくるのを覚え、目を覚ましたアヱカ―――
するとそれは婀陀那であり、この国のお大尽様が来ているというのにも係わらず、
不覚な姿を晒していたことに、謝意を示したのです。
けれども、婀陀那のほうは、そのことを咎める様子は見せず、話し合いたいことがあるから―――
と、アヱカをこの部屋から誘い出そうとしていたのです。
そう・・・先ほどの評定で、公表されたあの話題―――
しかし二人は、同室していたヘライトスの勧めには従わず、
部屋の隣室ではなく、ウェオブリ城の庭園に足を運んだのです。〕