≪二節;それぞれの思惑 U≫
〔それから、これより下準備にそれぞれが取り掛かろうとしたところ―――女頭領が、自分の側近兼姫君のお目付け役に対し、待つように促したのです。〕
紫:―――・・・いかがなされたのです・・・・公主様。
婀:・・・フッ、まぁよいわ・・・・実はなぁ、紫苑よ・・・
紫:はい。
婀:お主・・・姫君のお側についておって・・・・いや、それより、あのお方と行動を供にしていて、どのように感ずるか・・・・
率直に、忌憚のなきよう述べてもらえまいか。
紫:は―――はぁ。
いや、でも・・・お側につく―――と、申しましても・・・全くといっていいほど手がかかりませんで、逆に私めのほうがご厄介になっている状態でして・・・
しかも、あの方と行動を供にしていると・・・・・実に居心地がよいのです。
婀:ふぅむ―――そうか・・・・。(やはり・・・なるほどな)
紫:しかも―――今のように、ここの連中が盗賊かぶれであっても、ご奉仕をして差し上げるなど・・・
今までの我らからでは、とても考えのつかないことを率先してやりなさるなど・・・・
婀:ふむ―――そうか!よしっ! 決めた・・・決めたぞ!紫苑!!
紫:は?はぁ――― 決めた・・・と、云いましても・・・一体ナニをです?
婀:なぁに・・・決まっておろうが、予(かね)てからの計画の事よ。
紫:(予(かね)てからの・・・) も―――もしや、ここの独立化を・・・・??
婀:む―――その通りじゃ・・・。
紫:いや・・・しかし、その一件はカルマよりの協力が得られず、断念したはずでは・・・・
婀:なぁ―――・・・紫苑よ・・・
紫:は・・・・はい。
婀:なれば、他の処と、折衝すれば良きことではないか―――!
カルマは新興勢力ゆえに、こちらの条件を飲ませやすい・・・と、思うておったのだが・・・・
そちらがダメならば、まだ近くに2つもあるではないか。
紫:は・・・・はあ・・・でも、ラージャはその矜持の難さの余り、ここを快く迎え入れてはくれまい―――と、公主様自身が言い置いたことでは・・・
婀:だったれば――― 残りの一つがあるではないか。
紫:(もう一つ―――)は・・・ぁああ! ま、まさか・・・「フ」の事を云っておられるので??!
婀:その他の、どこがあるというのじゃ。
紫:い・・・・いけません!いけません!!
ラージャならともかく、あそこは私達の故国、「ヴェルノア」と隣接している事もあり、通商も外交も頻繁に行われているのですよ??!
当然―――あそこの大臣クラスは、私などはもとより、公主様・・・あなた様のお顔を・・・・
婀:―――知っておったら、どうだというのじゃ・・・。
確かに、以前はそのことを気兼ねにして、フ国と結ぶのを妾自身が嫌っておった―――・・・
だが、その時と・・・今と・・・ここを取り巻く環境は、明らかに異なってきておるのじゃよ。
紫:公主様―――では・・・
婀:ぅむ―――妾の肚は既に決まった―――!!
妾たちの素性が明るみに出るなど、あのお方を前にしては、ほんの些事にも過ぎぬ事よ―――・・・
そうであろう?紫苑よ―――・・・・
紫:は―――。
(それにしても・・・なんと晴れやかなお顔なのだ・・・宮城に於いても、私はこの方の、こんなお顔を拝見したことがないというのに・・・・
それほどまでに―――あの姫君の存在が、大であるというのか―――・・・)
婀:ははは―――! 愉快! いや・・・実に愉快じゃ!!
妾は・・・生まれてこの方、こんな想いをしたのは初めてじゃ―――
あのお方・・・姫君と、共に生きていく―――ということが、こんなにも清々しく感ぜられるとは―――・・・
おぉ―――そうじゃ! なぁ、紫苑よ・・・どうであろう、いっそのこと、姫君を我等の主と頂きおくと言う事は―――・・・
紫:は―――はぁああ?! あ・・・あの・・・公主・・・様?? 今―――
一体、なんと??
ひ・・・姫様を、このギルドの頭と頂くのですかぁ?!
婀:――――・・・ダメかな?
紫:ど・・・どんなものでしょう・・・でも、やはり断られると思いますよ?
婀:ぅぅむ―――・・・・・ならば・・・この組織――――解体するというのはどうじゃろう?
紫:え―――ギ・・・ギルドを・・・解体??
婀:そうじゃ――― このならず者達の頭に納まらせるのが不当であれば、一度ばらけさせて従う者だけを選別すればよい・・・・。
それに幸い、今回の姫君のなしように不服を唱える者など、おろうはずもなかろうしなぁ・・・。
その上で―――フ国の傘下として収まる・・・というのは、どうであろうか??
紫:(こ・・・この方は、なんと言う、遠大なる夢を描いておられるのだ―――!!)
〔この、女頭領と、その側近の会話―――その中には、中々に重要な事項が見え隠れしていたのです。
それは―――・・・実は、彼女達が、どこから来た何者であるのか―――と、いうことと・・・・
このガルバディアに介在する、7つの大国のうち、ほとんどが名指しで出たということ・・・・(これには、あのカルマも含む)
そして、一番に重要だったのが、女頭領が姫君とこれから共に生き、一つの大事業をなそう―――と、言うことだったのです。〕