≪四節;姫君とスピリッツ≫

 

 

〔そして、アヱカ姫とキリエ婆は、もっと互いの事をよく知り合おうと道すがらに会話をしたようです。〕

 

 

キ:ほぉ〜、すると何かね? あのギルドの荒くれ者共に、炊き出しをしてあげなさると・・・。

 

ア:ええ、ただでさえ国ナシのわたくしに、上等のお部屋や満足な食事までいただかせてもらっているのです。

  それに、わたくしはあそこの一員でもありませんのに、皆親切な方ばかりで・・・

 

キ:(親切・・・・ネぇ〜、ま、恐らく一部の人間だけだろうけども・・・さ。)

 

  ―――ん? おや・・・・?

 

 

〔このときアヱカ姫は、この「施し」の主旨をお話しになり、キリエ婆も賛同の意を表そう――――と、そう思った時です、

この近くの茂みから、二人が歩いている目の前に、一匹の――― それは小さな、可愛らしい小狐が出てきたのです。

 

――――が、この小狐・・・よく見てみると、傷やアザだらけになっていたようで―――・・・・〕

 

 

狐:み・・・みぅぅ・・・

 

ア:あっ―――・・・?!!

キ:(この子は―――・・・「フェザーテイル・フォックス」・・・スピリッツの一種――― それが、どうしてこんなにも・・・)

 

ア:(酷い・・・どうしたら、こんな傷だらけに―――・・・)

  ―――・・・・。

 

狐:(!)フ―――・・・フゥゥ―――――ッ!

 

キ:(あっ!!)い・・・いけません!いけません―――!この子は小さいからとて、気性は荒く、それに―――・・・

 

ア:―――・・・さ、・・・・・おいで?

狐:フゥゥ〜〜〜――――ッ!!

 

ア:(なぜかしら・・・このわたくしに対しても、ひどく怯えている感じがする―――・・・)

  さ―――・・・怖くないから・・・おいで―――?

 

 

〔手傷を負い、何かしら人間に対して怯えているようなスピリッツ。

それでもアヱカ姫は、彼の者を宥(なだ)めるように優しく手を差し伸べたのです。

 

ですが――――・・・・〕

 

 

狐:フウゥッ!

ア:(痛(つ)ッ―――!)

 

狐:フゥゥ――――・・・

ア:・・・・・・・・ほら、怖くない・・・・怖くない・・・・

 

キ:・・・・・・・。

 

 

狐:ゥゥ・・・・・・ゥ・・・・・・

ア:ほら・・・・怖くない・・・・。

 

狐:―――・・・。

ア:ね?怖くない―――ただ・・・怯えていただけなのよね?

 

狐:みぅ・・・・みぅ・・・・

ア:よしよし―――いい子。

 

 

〔そう―――その怯えていたスピリッツは、姫の指を噛んだのです―――が、アヱカ姫はその事を気に留めるでもなく、

逆に―――怖くないから・・・と、これまた優しく諭して差し上げたのです。

 

そして、その誠意が通じたのか、そのスピリッツは噛むのを止め、患部を優しく舐めあげた後、アヱカ姫に懐(なつ)き始めたのです。

 

その―――・・・一部始終を見ていた、老婆は―――・・・・〕

 

 

キ:(やはり―――この方は、今も昔も変わりはない・・・と、言う事か。)

 

 

〔この・・・・老婆、なにやら不思議なことを言っているようですが、

「今も昔も」・・・と、云うことは、伊達に百年近くも生きてはいないようです。

(それでも疑問の残る方は、<補章>を参照の事)

 

そして、このスピリッツとの間に生じた誤解も解け、買出しの続きをしようとしたところ―――・・・〕

 

 

狐:みぅ―――! みぅ―――!

ア:えっ?!どうしたの―――?

 

狐:みぅ〜〜!みぅぅ〜〜〜!!

ア:(どうしたのかしら・・・この子・・・)

 

キ:もしかして―――・・・

ア:えっ?

 

キ:仲間がいるのでは―――?

ア:―――と、なると・・・この傷は・・・!

 

キ:うぅ〜〜ン・・・でしょうねぇ・・・仲間の助けを呼びに行く際に・・・

ア:そうですか―――・・・分かりました。

 

キ:どう―――・・・・されたのです・・・・?

 

ア:キリエさんは、この子の事をよろしくお願いいたします―――。

  わたくしは、この子の仲間を見つけ次第助けて上げたいと思います。

 

キ:でも―――・・・この子は、見てくれの通り人間ではないのですよ・・・?

 

ア:―――――・・・お願いいたします。

 

 

〔何かしら―――訴えたげなスピリッツの声に、アヱカは疑問を抱いたようなのですが・・・

所詮は、違う種族同士、完全なる意思の疎通が出来ようはずもなく、困り果ててしまうのです。

 

しかし―――ここでキリエ婆が、自分が今まで培ってきた経験からか・・・でしょうか、

ひょっとすると、この傷だらけのスピリッツに仲間が居り、その助けを求める為に、こんな所に出てきたのではないか―――と、いう推測を立ててみたのです。

 

その事を聞き、何かを思い立ったアヱカ姫、しかし、それは想像上に難(かた)くなく、このスピリッツの仲間をお助けしよう―――と、言うこと。

 

でも、キリエ婆は―――「この子は人間の子ではないのだから」・・・と、言い、姫君を何とか思い留まらせようとするのですが・・・

実はこの言葉は、この老婆・・・キリエがアヱカを試すために言い置いた言葉・・・

 

それを証拠に、スピリッツを老婆に託し、その仲間を救出に向かったアヱカ姫を見送った後での・・・・

この老婆と、スピリッツとの間の会話が――――・・・・〕

 

 

キ:≪安心をし・・お前のお姉さんは、きっと助かる・・・あのお方が、きっと助けて下さるよ・・・乃亜。≫

乃:≪キリエさまぁ・・・・≫

 

 

〔今の会話は、人間の言語でなされたものではなく、スピリッツとの間でなされる「精霊言語」であり、

――――だとすると、その言語を流暢に話せるこの老婆も、やはりスピリッツなのでしょうか―――??〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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