≪六節;泪のチカラ≫

 

 

〔地べたにてぐったりとしている、このスピリッツと・・・あの時、自国にて展開された大虐殺と・・・そう変わりはないことに、胸を痛めるアヱカ・・・〕

 

 

ア:(わたくしは・・・この子すら、救う事が出来ないの―――??)

 

 

〔所詮は「力無き者」の言葉・・・ゆえに、誰も耳を傾けようとはしない―――どころか、

逆に耳の痛いことを云われてしまい、しょ気てしまうアヱカ姫―――

 

すると、その時――――〕

 

―――コぉラぁ〜〜〜!!―――

 

子:い゛っ――― こっ・・・この声は・・・

 

キ:お前達〜〜いっ! そんなトコで、ナニやっとるんかァァ〜〜〜っ!!

 

子:やっ―――やっべぇ! キリエのくそババぁだ!!

 

キ:なッ―――なんじゃとおぅ〜〜〜ッ! またんか―――ッ! こんのくそガキ共はぁぁ〜〜〜〜っ!!

 

子:み、皆・・・逃げろ〜〜〜っ!!

 

 

〔まさに「雷鳴一喝」とはこの事で、雷の如き怒鳴り声を上げたのは、この街の外れにある「キリエ堂」店主の老婆だったのです。〕

 

 

キ:まぁッたく・・・今日びのくそガキ共ときたら、私の事を「くそババァ」だといいやがる・・・

  おっ――・・・っと、あなたの前でこんな汚らしい言葉・・・適当ではありませんでしたねぇ・・・。

ア:い・・・いえ、でも・・・それよりお婆さん、どうしてあなたがここへ?

 

キ:え?えぇ〜〜・・・そりゃあ、やっぱり・・・このババめにも、少し思うところがありましてねぇ〜?

  それよりも・・・・ほら―――

 

狐:・・・・・。

 

ア:あ―――・・・この子・・・そう、仲間を迎えるのに・・・

キ:いいえ―――・・・そうでは、ありませんよ・・・

 

ア:え?あの・・・それは、どういう意味なのです?

キ:・・・ほら・・・・お行き。

 

狐:みぅ! みぅ、みぅぅ〜〜・・・

 

少:・・・・・・・・ぅ・・・・。

 

 

〔そして、キリエ婆の肩口からひょっこりと顔をのぞかせたのは、先程のスピリッツだったのです。

するとそのスピリッツは、キリエ婆から促されるままに、自分の仲間であろう・・・動物の耳と尻尾を持った少女の下に駆け寄り、

その痛めつけられた患部を、労(いた)わるように舐めてあげたのです。

 

すると、どうでしょう―――意識を失っていたはずの少女は、それを取り戻したらしく、薄っすらと目を開け始めたのです。

そして、次の瞬間――――〕

 

狐:みぅ!

 

ア:えぇ―――っ? こ・・・この子も??

 

 

少:ね・・・・ねぇちゃまぁ・・・・

少:ノ・・・・ノ・・ア・・・―――

 

少:ね―――・・・ねぇちゃまぁ!ねぇちゃまぁぁ!!

ア:ああっ・・・ダメよ! そんなに揺り動かせては・・・

 

少:で・・・でもぉぉ〜・・・

少:・・・・・・。

 

 

〔この小狐の感情が高ぶってしまったのか、今、そこに横たわっている少女と、なんら変わりない姿になってしまったようです。

しかも、驚くべきことに、この者達は、人の言語も話せた―――・・・

 

でも、横たわっていた少女は、自分の傷を舐めて癒してくれたのが、自分の妹だという事と・・・その安否が分かり、安心してしまったのか・・・・

また、その目を閉じ―――そのまま・・・・・・動かなくなってしまったのです。

 

 

その―――惨(むご)すぎる事実を突きつけられ・・・・何も出来なかったこのお方は・・・・〕

 

 

少:ね―――ねぇちゃ・・・・う・・・・・ぅぅぅ・・・・・

 

ア:そ・・・・そんな・・・・

  〜〜―――・・・ゴメンね・・・・ゴメンなさいね・・・こんな・・・こんな、ひどすぎる事って・・・ないわよね・・・・

  赦してなんて・・・いえないわよね・・・。

 

少:え――・・・?

  (このひと・・・おねぇちゃまのために・・・・ないてる??)ぅぅ・・・・・ぅぅ〜〜・・・

 

 

〔別に、自分がやってしまったことではないのに・・・・

アヱカ姫は、自分達の種族「人間」がしてしまった過失で亡くなったこのスピリッツの少女のために、

もう・・・どうにもならない事に、その目から泪を零(こぼ)したのです。

 

すると―――・・・その泪は、スピリッツの顔に程よく降りかかり・・・・・〕

 

 

少:―――――・・・ぅ・・・・・・。

 

 

紫:(あっ・・・あれは・・??)

キ:・・・・・。(女禍様・・・)

 

ア:ぇえっ?!

少:ね、ねぇちゃま??

 

 

〔アヱカ姫の―――いえ、今世(こんよ)の「女禍の魂」を受け継ぐ者の泪を受け、

早、絶命してしまったであろうと思われた少女の身体が突然に光り輝き、

そしてなんと・・・・そのスピリッツの少女は、自己の生命反応を取り戻したというのです。〕

 

 

少:・・・・・・・。

  (こ・・・これは・・・・泪?? 一体誰の・・・・こんな・・・あたし達のために・・・・泪を、流してくれるの・・・・・って・・・)

 

 

〔その・・・朧げな意識の下で、うっすらと目を開けた、スピリッツの少女の見たものとは・・・・・〕

 

 

ア:―――――――!!!

 

少:(この人・・・この瞳――― この・・・温かいぬくもり・・・・そうだ―――この方は・・・・)

 

―――ジョ・・・・カ・・・・―――

 

ア:えっ?!(ジョ・・・カ・・・?)

  ・・・・・・・・・・。

 

キ:・・・どうやら、気付きなさったようですねぇ・・・。

ア:えっ? あ―――は、はい。

  わたくしも、一時はどうなる事かと・・・それが・・・・本当に・・・・よかったです。

 

 

少:あ・・・・キリエ様ぁ―――

  みゅゥ・・・・みゅぅみゅぅみゅぅ・・・・・。

 

キ:あぁ・・・・そうだねぇ、うんうん・・・よしよし。

ア:あ・・・あの―――今、この子と何を話していらっしゃったのです?

 

キ:え?あぁ―――いやぁ、なに・・・助けてくれてどうもありがとう・・・これから私達姉妹、あなた様のお傍にいてもよろしいですか―――・・・って。

 

ア:そうだったのですか――― 分かりました。

  この子の負ってしまった、深い・・・・深い痕は、せめてわたくしが癒して差し上げようと思います。

 

キ:フフ――・・・そうですか・・・。

  いいんだって、コみゅ・乃亜・・・。

 

コ:ありがとう・・・・ございますっ!

乃:ありがとう・・・・ですみぅ。

 

ア:そう・・・あなた達、コみゅちゃんと乃亜ちゃんというのね、

  わたくしはアヱカ・・・こちらこそ、よろしくね?

 

コ:ハイっ―――ですみゅ!

乃:あいあいさぁ〜

 

 

〔こうして、双子のスピリッツ―――コみゅと乃亜は、アヱカ姫と一緒に住まう事となるのです。

 

――――が、その前に、コみゅがキリエ婆に「精霊言語」で話しかけていた事・・・とは、本当にああだったのでしょうか?

いえ――――真実は、こうなのです・・・

 

「この方が、今の世に復活なされた女禍様なのですね」―――

 

それを、ああ言った穿(うが)った解釈で伝えた・・・と、いうのは、それはアヱカが未(いま)だ、自分の持てる力・・・

ひいては、これから降りかからんとする宿命に、無自覚だったからに他ならなかったのです。〕

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

あと