≪四節;緋刀貮漣その真の姿≫
〔たとえそうであっても、刺客の手は緩められはせず―――
けれども・・・〕
マ:―――むっ?! うわぁああっ―――!!(ずざざ〜――)
ガ:・・・その技―――晄盾・・・そうか、お前が清廉の騎士・・・
相手にとって不足はない、参るぞ―――!!
〔やはり―――先ほどリリアと剣を交わらせたときと同じように、
薄い光を帯びた防護幕を出して攻撃を防ぎきったタケル。
それを見たガムラ某という男の屍は、その技の名を即座に答えたのです・・・。
でも、そんなことはお構いもなく、続いて今度はその男の屍が、
刀身がまるでのこぎりの歯のような<罪過刀>を振りかざしてきたのです。
すると―――今まで・・・多くの他人の前で詳らかにされてこなかった“清廉の騎士”の武器が、
持ち主の闘気を吸収して、白日の下に晒されたのです。〕
婀:お・・・おお―――こ、これが・・・緋刀・貮漣の真の姿―――
ガ:(美しい―――・・・)
マ:(まるで・・・持ち主の心の清らかさが、そのままにあしらっているかのような刀身・・・)
ガ:(・・・永かった―――これで心置きなく・・・)
マ:(・・・そうだねぇ―――兄さん・・・)
ト ・ ・ クン ――
〔タケルは、自らのことを“清廉の騎士”だと、大勢の前で広言しなかったがために、
よく別の呼称をして呼ばれていました。
その呼ばれ方とは・・・<清流の君>・・・
しかして“清流”とは、=河=の流れの一部であり、普段物静かな性分の者のことを、
“いるかどうか判らない”という揶揄で呼んでいたものなのですが。
そこにいたのは、=河=のもう一つの性質・・・荒波逆巻く“濁流”のような激しさの持ち主―――
それはもう、岩をも砕く性質のそれであったとされたのです。
すると・・・それに反応をするかのように、“眠り”から覚めたある存在が―――・・・〕
女:>う・・・ううっ―――こ、この気は・・・(はっ!)この気は―――?!!<
ア:あ・・・ぁ、タ―――タケルさん・・・やめて・・・お願い―――
その者達は、わたくしの故国で、わたくしと共に生きてきた者達・・・
たとえ・・・一度死んだとしても―――!
婀:(な・・・に?! するとこの方は、この者達がそうであることを知って―――)
〔アヱカは・・・その二人の兄妹が、もうすでにこの世の人間ではないことを、
判りきっているようなことを嘯(うそぶ)きました・・・。
けれどもアヱカは、例えそうであったとしても、現在の護衛役である“清廉の騎士”タケルに、
彼らを誅滅することを止めさせようとしたのです。
ですが―――・・・〕