≪七節;甦ってくる涕・・・≫
イ:――――・・・・。
セ:な・・・なぜ―――
リ:攻撃を―――・・・
〔イセリアたち“雪月花”の三人・・・いや、その場にいた婀陀那も、わが目を疑うしかなかった―――
それもそのはず、デスナイトたちの武器は、タケルの身体のあと数寸のところで、止(とど)められていたのですから・・・。
けれど・・・どうして―――
この二人は、アヱカを弑逆するために、この国に遣わされた刺客ではなかったのでしょうか・・・〕
ガ:・・・良くぞ判ったな。
だが、どうして―――・・・
タ:・・・先ほどのワシの問いかけに、そなたたちは『これしきの痛み』と云った―――
そう・・・“痛み”と―――
そなたたちは、今、痛みというものを感じている。
痛みこそは、生ある者の証・・・つまり、そなたたちは真に屍人ではない―――
僅かばかりの仮初めの命を吹き込まれた存在・・・それに、相違ございませぬな―――
マ:フフ・・・フフフ―――なんだ・・・ばれちゃってたよ・・・兄さん。
どじだよねぇ―――あたいたち・・・(ガクッ〜)
ガ:・・・そうだな―――だが・・・もう思い残すことは何もない・・・
見よ、マサラ・・・われらの姫さまが、こんなにも大きくなられて―――
マ:姫サマ―――会いたかったよぅ・・・(ポロポロ)
あれ?おかしいや・・・おかしいよ―――あたいたち、死んだはずなのにさァ・・・
ガ:(ポロポロ)・・・まことに辱(かたじ)けのうございまする―――
このわれらの身に・・・失われたものを与えて下されて―――
ア:お前たち・・・なんということを―――
この私に会いたいがために・・・そこまで―――・・・
ガ:・・・あなたは―――
やはりあのお方の仰られていた通りだ・・・
もうわれらに、この世にて思い残すことなど・・・未練など微塵にも感じておりませぬ。
―――願わくば・・・われらの最期・・・あなた様のおチカラで―――
〔―――よろしかろう・・・と、彼方からは答えがあり。
するとどこからともなく神々しいまでの光が、二人の周囲(まわ)りを包み込みました・・・
彼らは―――そう・・・アヱカの命を奪いに来たのではなく、
ほんのちょっと前に、自分たちがその命を賭して護った、姫君の成長振りを見届けるために、
そこに遣わされた者達なのでした・・・。
すでに生命の紡ぎを終え、涕など当に彼岸に置き去りにしたはずなのに―――
この・・・両の眼(まなこ)から零れ落ちる熱いモノは、なに・・・
嬉しくて―――嬉しくて・・・たまらないほどに零れ落ちる涕・・・
その熱いモノは―――二人の忠義の騎士が、光の中に掻き消えるまで・・・
とめどなく流れていた―――と、後世には伝えられたのです。〕
To be continued・・・・