≪三節;最良の相棒≫
〔それはそうと、悔し紛れにあの場から去ったリリアは―――と、云うと・・・
彼女は、城の休息所の一つにいたのでした・・・。〕
リ:(はぁ〜あ・・・イセリアのヤツ―――余計なことをしてくれなくても・・・
婀陀那様に、プライドも失った私に、これからどうすればいい―――って云うのよぅ!!)
〔リリアは、今更ながら云うまでもなく、同性である婀陀那のことを慕っていました。
しかし、リリアの弁護のために、ここで敢えて云うのならば、
リリアはいわゆるところの“同性愛者”なのではなく、
彼女と相性のよい異性に巡り合わさなかっただけのことなのです。
そのことは彼女本人ですら気付いていなかったわけなのですが・・・
いわば、“宝の持ち腐れ”―――と、云ったような、損をしていたとも云えたのです。
けれども・・・これから起こることを、予(あらかじ)め見抜いていたというのでしょうか・・・
それとも、たまたまの偶然―――だったとでも云うのでしょうか・・・
ちょうど、あることの相談を持ちかけるために、自らの州から王都へと赴いていた人物が・・・〕
誰:(―――うん? おや・・・あれは。)
失礼―――ですが、もしやあなた様は・・・
リ:えっ・・・? あっ―――これは、ジン州公様!?
カ:はい―――・・・それにしても、よもやと思いましたが・・・
やはりあなただったようですね、リリア様。
リ:はあ・・・ところで、ジン州公様はどうしてこんなところに。
カ:はい、実は―――・・・
〔その人物とは、たまたま・・・休息所のある回廊を歩いていた―――
そして、リリアのみならずセシルやイセリアも一時期世話になったこともある、
フ国はジン州の公―――カ=カク=ハミルトンなのでした。
この人物が、どうして王城に・・・一体何の用で訪れていたのか―――と、云うのは、
この際後に回し、彼が一様に疑問に思っていたこと・・・
現在ではハイネスブルグの砦へと屯(たむろ)している宿将の一人が、
どうしてこんなところに―――・・・それも、心なしか少し萎(しお)れている感じがするのはどうしてなのか・・・
そのことなのですが、
それはリリアのほうでも―――地方の 州 という“領”を預かる長が、
この時期になぜここに来ているのか―――・・・
それを質(ただ)したところ、思わぬ答えが返ってきたのです。〕
リ:ええっ―――? また・・・東に、動きが?!!
カ:ええ―――これが私の思い過ごしであってくれればよいのですが・・・
事が生じてしまった後になって、慌てふためく―――というのは下の下・・・愚にもつかないことなのです。
ならば、手遅れになる前に、こちらも何らかの手立てを講じておかないと―――・・・
リ:(この人・・・なんて深い読みをするんだろう―――
そういえば、以前も感じたことなんだけど、こんな有能な士が、地方の州公程度で終わるなんて・・・)
カ:―――そのためにも、録尚書事様とタケル殿・・・
それと、諫議大夫様にもご相談を仰ぎに参った次第なのです。
リ:―――・・・。
カ:・・・?
―――リリア・・・様?
リ:あっ・・・ああ―――ごめんなさい・・・。
そうね、それは一大事だわ―――それに、私が知ったのも何かの 宿 ね・・・。
カ:そういわれてみればそうですね・・・。
―――でしたらば、リリア様でよろしければ、ご同行を願えませんでしょうか。
リ:ええ―――喜んで!
〔“縁”とは―――その辺に散らばっているようなものであり、
また、滅多と巡り合わせられるものではない・・・。
けれども、同じ“宿”の持ち主同士が、巡り合わさったとするならば、
それは、互いが強く引き寄せあい―――その後滅多なことでは分かたれはしない・・・
しかし、そこにあったのは紛れもなく“縁”―――なのでした・・・
片の存在が、もう一片を見初めあったとき・・・
それは、互いに手を取り合い、あの四人のいる部屋へと戻っていったのです。〕