≪三節;告げ口≫
〔普段の諫議大夫からは、思いもつかないほどの激昂ぶりに、
会場も一時騒然となったものなのですが・・・
そんな中でも法要は営まれ、終会になろうとした頃、
“愁王”(ヒョウ)の跡目を継いだ、“継王”(ホウ)になりかわり、喪主を務めた太后の下に、
先ほどアヱカに非難をされた官が近づき―――〕
リ;・・・この度はご足労を―――
官:太后様、ちょっとお話しが・・・
先ほどの諫議大夫様のことなのですが―――
こちらとしましても、世の時勢がどこにあるのかを説いておりまするのに、
大勢の前で恥をかかされまして・・・
太后様からも一言申してくだされ。
これ―――誰かある、至急諫議大夫様をこちらへお通しいたせ。
〔不適切なことではない―――それはむしろ非難した側にあるのだということを、
太后リジュの前で奏上した官は、すでに感情的になっており、
ついにはアヱカをこの場に引き出してくるよう、周囲(まわ)りの者に促せたのです。
―――ところが・・・〕
イ:・・・ここには、もうあの方はおられません。
官:なんですと―――? イセリア殿、それはどういうことです。
よもや、ご自分のなしてしまわれたことに恥じ入り、逃げ出したとおおせられるか。
婀:いや・・・そうではない。
あの方は戻られたのだ。
ご自分のお住まいに―――・・・
官:なんですと―――?
では、しかし・・・それでは愁王様の遺言の執行が―――
婀:そのことに関しては、すでに発動しておりまする。
それより―――いらぬ舌の根をまわして命を危うくされますなよ。
〔アヱカの姿は、もうこの会場にはありませんでした・・・。
それは、官からの追及を逃れるために、なされた手段のようにも見えたのですが・・・
そうではないことを婀陀那の口より語られ、また官にも口を慎むよう伝えたのです。〕