<第八十三章;来るべき新しき未来>
≪一節;収まりきらぬ混乱≫
〔前王ヒョウの意思により、僅か14でフ国王の位を受け継いだ ホウ=ノトス=アレキサンダー(継王) は、
彼の教育を担ってきた、官からの教えを受けていたにも拘わらず、
国政に携わる多くの諸問題に、早くも難色を示していたものでした。
継王であるホウは、国王に就任した当初、他のどの列強の国王よりも年若く、
それゆえに政(まつりごと)の難しさに、早くもぶつかってしまっていたようなのですが・・・
脇を固める録尚書事や尚書令の働きもあって、順風満帆に再出発がなされたのです。
・・・が、しかし―――
そのことはやはり、他の官吏たちの目からしてみれば、“傀儡”以外の何者でもなく―――
それはイセリアも―――ましてや婀陀那もよく心得ていたわけであったため、
彼女たちはある一線をして、政治の表舞台から姿を消してしまったのです。
では・・・そのある一線とは―――
ホウが、フ国王に就任をして九つの月日が経った頃・・・〕
官:それでは―――これより朝議を行います。
官:その前に・・・イセリア殿や婀陀那様は―――?
官:ご両名からは・・・
『自分たちが国権に口をはさみすぎるというのは、国の発展を妨げることであり、
退化にはなりえても進化には成り得ない―――』
―――と、申され、今朝早く陛下の御許を訪れて、辞職の願いを出されたとか・・・。
官:辞職―――・・・それはまた、穏やかではありませんなぁ・・・
官:しかし・・・それにしても、結局のところは余所者だから、前王の寵愛があったとしても、
一向に恩義を感じぬ―――ということですか・・・
官:いやいや―――前王の寵愛を一身に受けておられたのは、かの両名にあらず。
現国王の大傅でもあられたあの方ではございますまいか―――
官:おお―――そういえば・・・前王の諫議大夫でもあられたあの御仁は、
あの葬儀より自邸で蟄居をしておるそうではないか。
それに・・・あの会場での不適当な物云い―――もしやすると、叛意があるのでは・・・?
――〜わいわいがやがや〜――
〔新王就任、九ヶ月目に来て、イセリアと婀陀那揃っての総辞職に、
早くもフ国の屋台骨は揺らいでいました。
それもそのはず、いつもまとめ役を担っていた二人を欠いてしまっては、
他の官吏たちは実に云いたい放題に、この場には居合わせない者達を糾弾していたのです。
その様子は、若くして大国の国王に成り得た者の目にも、醜く映ってもいたのです。〕