≪三節;=禅譲=―――時代を継ぐる意志≫
〔それからまた数ヶ月が経って後―――元はドルメンでもあったシャクラディアの主に、
これまで再三にわたる意見の交換を求めてきた官吏の主は、自らが鳳蓮車に乗って、
直接シャクラディアまで赴き、自らの意志を聞き届けてもらうよう、依願をしようとしていたところ・・・
その居住の正門には、もはや非客牌は掲げられておらず、
玉体も・・・またその付添い人である太后も、途(みち)を進んでいったのです。〕
ホ:(なんて・・・広くて大きい―――
以前ボクが、大傅様の教えを請うていたときに、幾度か足を運ばせたことはあるけど・・・
あのときよりも・・・進化を続けている―――??!)
リ:ホウや、どうかしたのです。
ホ:母さま―――ボクは・・・ここがこんなにも大きくて広いところだとは知りませんでした。
大傅様に連れられて、何度も何度も通っていたはずなのに・・・
―――近くにある・・・建物のあり方でさえ、よく見えていなかった・・・
リ:・・・ホウ―――
〔母である太后・リジュを伴い、シャクラディアを訪れていた継王・ホウは、
以前から・・・大傅であったアヱカに手を引かれて、幾度となくこの地を訪れていたものなのに、
あの頃は自身が幼すぎたからか、この場所がこんなにも広大であるとは思いもよりませんでした。
この場所は―――今まで自分たちが居住い、多くの官吏たちを養ってきた、
≪マーヴェラス≫・・・ウェオブリ城よりも、大きい規模を誇る居城―――
まさしく・・・“次代の王”―――そういった存在が、居住として構えるに相応しい王城・・・
それからまもなくして―――接客の間らしきところに差し掛かったとき・・・〕
ア:―――・・・。
ホ:あっ・・・おねぇ―――いえ、これからボクの禅譲の意志を受けていただく方よ・・・
伏して、お願い奉り申上げる・・・。
ア:・・・一度ならず二度―――二度ならずとも、此度は王御ん自らがお出向きあそばされ、
愚直なる者としましては、重ね重ねのご無礼、傾頭申し上げても足らぬものでございます。
―――が・・・只今、“禅譲”と・・・?
ホ:―――はい。
〔<禅譲>とは―――治める力に限界を感じた統治者の最終手段であり、
ホウがこれまでに再三に渡り、シャクラディアの主であるアヱカに打診をしていたこと・・・
けれども、継王の真意を知ってか知らずか―――
シャクラディアの主は、使者に会うことを拒み、それゆえに継王自らが出向き、
アヱカに平伏する象(かたち)をとることで、このことを受理してもらおうとしていたのです。
しかし、それは同時に、ホウが“フ国王”という身分から、一平民に落とされたことを意味し、
おそらく、王家の威厳が損なわれていなければ、相応に苦痛に感じていたことでしょう。
けれども・・・ここに来ている者達は、この城に居住を構える者が誰であるかを、
すでに知っていたのですから・・・
むしろ、そのことも妥当だとも、捉えていたことだったのです。〕