≪二節;慶賀の祝詞≫
〔そして―――玉座の間にて、女皇が諸侯たちからの慶賀を受けようとするとき・・・
ほんの少しながら、異変があったようなのです。
その異変とは・・・いつの間にか、“ヴェルノア公国の公主様”のお姿が見えなくなっていた・・・と、云うこと。
けれども諸侯たちは、玉座の間に現れた女皇と、その両脇を固める男女二人を見て感嘆の声を上げたのです。〕
賓:おお―――・・・来られたようですぞ。
賓:おおっ! あれに見えるは・・・ヴェルノアの公主である、婀陀那様ではございませんか??
賓:そ・・・それが―――新たなる国家の、女皇陛下の脇を固めておるというのは・・・
――〜ざわざわ〜――
〔やはりというべきか、その場には動揺がありました。
それもそのはず―――今まで、ガルバディア大陸の“中華”なる国として存在していた大国が、
実質的に滅びてしまった今日(こんにち)、そのあと役割を担っていくであろうと目されていた大国の主が、
新国家建国の慶賀の祝詞を述べる側ではなく、それを女皇陛下と一緒に拝聴に回る側として列席していたのですから。
しかも―――・・・諸侯たちの動揺覚めあがらぬうちに、
彼らを差し置いて、最初に慶賀を述べた人物が・・・〕
将:このたびの、女皇陛下の登極―――まこと、お慶び申し上げ奉ります。
婀:そこもとの、官姓名を述べられよ―――
イ:はっ―――・・・不肖、私めは元・ハイネスブルグに属しておりました、
イセリア=ワイトスノゥ=ドグラノフと、申す者でございます。
婀:ほぉう―――・・・ハイネスブルグの・・・
すると、貴官はかの国を代表として・・・と、云うことですかな。
イ:いえ、私はかの国から罷免をされた身でございます。
現在としての拠り所は、旧フ国・ジン州にございますれば―――強いて云うなれば、今はフ国民と云ったところでしょうか。
〔その来賓は、フ国の晩年期において、かの国の尚書令として、国をよく支えた官吏の一人であるイセリアでした。
そんな・・・上級官吏であった者でさえも傾頭し、新国家の女皇陛下登極の祝詞を述べる姿を目前にした諸侯たちは、
それ以後、遅れを取っては―――と、緊張の面持ちをしながらも、粛々と慶賀の祝詞を述べたのです。〕