≪三節;動揺を呼ぶ 女皇のお言葉≫
〔そして―――その儀が滞りなく終焉する頃、今度は女皇自らが口をお開きになり・・・〕
ア:皆様方に於かれては、このお忙しい最中(さなか)ご足労いただき、まことに恐縮に存じ上げます。
だから・・・と、云うこともありませんが―――この中には、旧フ国の官吏だった方もおられるので、
甚だ遺憾なるコトとは存じ上げるのですが・・・
〔『今日のこの日、忙しい中を―――・・・』と、女皇は言葉を紡ぎだされ、
来賓全員に感謝の意の言葉を投げかけられた・・・まではよかったのですが、
その次に紡がれた言葉の中には、誰もが言葉を失うほどの驚きがあったものとなりました。
それというのも―――・・・〕
ア:私は、以前にそうだったから・・・と、云うことで、国の要職を任せるということはしたくありません。
確かに、その時期にそうであったということは、その時期には妥当であったかもしれないけれど、
私の造ろうとしている国家に関しては、定かではないかもしれない―――・・・
つまり、大変失礼な言い方になってしまうかもしれないけれども、
能力のない者に、国政において重要な官職を任せるつもりは、念頭には置いていないのです。
ただし、これから数日のうちには、便宜上以前の官職を引き継いでいただくことになるかと思います・・・
〔そしてまた、どよめきが起こりました―――
和やか且(か)つ、穏やかなる顔に声をしていても、その言の葉の中には厳しさというものがあり、
女皇陛下の掲げる理想が、遙かなる高い処にあることを、総ての来賓は知るところとなったのです。
けれども・・・だとしたならば、なぜ女皇は大勢の来賓を前にし、このようなことを述べられたのでしょうか―――
それらのコトを踏まえたうえで、これから女皇がなそうとしていることを告げるにいたり、
今回最大のどよめきが、玉座の間に広まったのです。
それこそが―――・・・<国吏の適正試験>・・・
しかし、その意義自体は、旧フ国やその他の=列強=にも、以前から実施されていたものなのですが、
女皇が改めてそのことを宣下したということは、各国で実施されていたそれは、
試験問題の漏洩や、“口利き”などが数多く横行しており、
決して公正なものではなかったことを物語っていたのです。
それだからこそ、これまでの制度の刷新を図ろう―――と、云うものなのですが・・・
それでは、具体的にはどうしようというのでしょうか―――・・・
けれども、それこそは簡潔にして明瞭―――
早い話し、その問題自体を女王陛下自らがお作りになろうということ・・・
それに、こうも宣下申し上げられたのです。〕
ア:このたびの試験の問題に関しては、そんなには難しいことを訊こうというものではありません。
“人”としての当たり前のことを訊くだけです。
人しての“道”―――『仁道』や『孝道』とは、かくどうあるべきか―――・・・
そのことを知り、疚(やま)しい心がありさえしなければ、狼狽するには及ばないでしょう・・・
私は、この試験を、旧フ国の官吏だけに留まらず、私の矜持の下(もと)に集(つど)っていただける方ならば、
喩(たと)え一庶民であろうとも、他の国家の方々であっても、分け隔てなく広く門戸を開放するつもりでもいるのです。
〔そこにあったものこそは、今現在の試験のあり方を訪(と)うたものであり、
本来公正であるべきものが、人の手によって不正に曲げられていることを嘆かれていた言葉でもあり、
そこを女皇ご自身が是正をし、自らが問題の作成をし採点をする―――と、云う、
一見をしても非効率的なことをなされようとしていたのです。〕