≪五節;官吏適正試験・・・その結果≫
〔かくして―――公示された日より一両日に試験は執り行われ、
終了の頃合いには悲喜交々(ひきこもごも)の受験者たちの顔色が伺われたようです。
そして、その日のうちに、総ての解答用紙は女皇の下に集計され、
約一週間の期間を経て、総ての解答用紙に眼を通したのです。
結果としては―――凡庸なる者と、そうでない者との差は広まるばかりとなり、
尚書令・録尚書事などを含める重要官職は、その日をもってすぐに通達され、
ここに、新皇国である『パラ・イソ』の基盤は固められたのです。
ところで―――この試験の内容とは、女皇陛下がすでに諸侯たちの前で宣下された通り、
『仁道』や『孝道』について訊かれたものが多くあり。
またその他にも、『取り立てた税の使い途(みち)』など・・・計十問用意されていたのです。
また、点数の配分も、『仁道』『孝道』が大きな位置を占めていたことは、云うまでもなかったでしょう。
それはそれとして―――パラ・イソ女皇と、永く面識のあったキリエは・・・と、云うと、
現在彼女が駐屯をしている某砦にて―――・・・〕
キ:あら―――ベイガン、試験のほう・・・どうだった?
ヒ:あ゛〜〜やっちまったぜ―――・・・
まぁ〜るでさっぱり・・・わかんねぇんでヤンの。
そういうキリエさんはどうなんだい。
キ:私は・・・まあまあといったところね。
そもそも今回の試験で訊かれていたことは、古(いにし)えにも皇自らが教鞭をとられていたことでもあったけど・・・
合格できれば、これ幸い―――と、云ったところね。
ヒ:は〜〜―――さっすが、ちがうもんだねぇ・・・
キ:―――なにがよ。
ヒ:だってよ、キリエさんてば知ってんだろ?
“皇”―――ってヤツが、どんな矜持持ってたか・・・
キ:あのね―――・・・(“ヤツ”じゃないでしょ・・・“ヤツ”じゃ・・・)
――――あら?あの人は・・・
キ:なんかの使者のようだな・・・ケド、あの顔―――オレたちのいた国じゃ、見たこともねぇな・・・
〔実を云うと彼ら二人は―――いえ、この二人だけに留まらず、未だに前線へ出ている多くの将兵たちは、
新皇国における女皇の登極も、官吏登用試験の開催実施も、新たに皇都として指定されたシャクラディアへの参詣も、
その任務の重さゆえに儘(まま)ならなかったようなのです。
けれども、このたび皇都より使わされた使者は、この前線の基地に赴き、
直接女皇陛下が認(したた)められた証を、そこで読み上げたのです。〕
使:失礼ながら、キリエ=クォシム=アグリシャスなるお方は、どちらになりましょうか―――
キ:あ・・・はい―――それならば私ですが・・・。
使:然様でございますか、では僭越ながら―――
――右の者、=左将軍=に任ずるものである――
謹んでお受けいたしますように―――
キ:畏(かしこ)みをもって、拝命仕(つかまつ)る所存にございます―――
して、そこもとは―――・・・
使:私は―――このたびより、女皇陛下より=鴻臚輔(こうろほ)=(外交次官)を拝命しました・・・
紅:元はヴェルノア公国に属しておりました 紅麗亜(くれあ) と、申す者でございます。
キ:ヴェルノアの―――・・・すると、あなた以外にも・・・
紅:はい―――・・・私は、以前まで某国のうだつのあがらない官吏の一人でしたが、
此度の新皇国が開催した、官吏適正試験を受け、新国家で一旗あげようと一念発起した限りなのです。
〔キリエは、この紅麗亜という人物の出身を聞き、眼を見張りました。
そう、その紅麗亜という人物は、元はヴェルノア公国の出身で、一つの官職に就いていたわけであり・・・
例えそうだったとしても、新国家が出来たことで奮起してみようと、
自らの能力を試すために、登用試験を受けてみたということなのです。
またさらには・・・この紅麗亜某の他にも、他国からの官吏の“流れ”があったようなのです。〕