≪六節;覚醒(めざ)め始めた存在(弐)≫
〔すると・・・女皇は―――〕
ア:イセリアさん・・・それに、そちらはジュヌーンさんですね・・・。
その、あなた様が・・・どうしてこの現世(うつしよ)に出てしまわれたのか―――
それは問わないで於くことにいたしましょう・・・
けれど―――この場には現れるべきではなかった・・・
そう、悔い改められておいでなのですね。
ジ:―――はい・・・
ア:あなたも―――未だ生を紡げられておいでならば、
愛しき人と、倖せな刻を過ごせられたはず―――・・・
過去には、その愛を一身に受け、倖せに満ちた日々でおありでしたのでしょうに・・・
ジ:―――――はい・・・
ア:それでも―――あなたは、なお・・・
かつて愛した方の倖せをも願ってもいる・・・
倖せな―――家庭を築くことを望んでいる・・・
そうに、間違いはございませんね・・・。
〔女皇は―――その当初、どこかたじろいでいる様にも見受けられましたが、
すぐに気を持ち直し、毅然とした態度でジュヌーン某に問い質(ただ)したのです。
しかも、そのときの表情というのが、生来よりの真紅い眸を、より一層真紅くさせ、
まるで燃え盛る焔のように、怒りに滾(たぎ)っている様にも見えました。
けれども―――話している感じからは、とてもそうには見えないくらいリ冷静ぶり・・・
しかし―――・・・
先ほどまで、アヱカの身体を借りて出現をしていたのは、“古(いにし)えの皇”である女禍様・・・
ところが、ふとした拍子に、強制的に アヱカ本人 に取って代わられてしまった―――・・・
そう・・・“強制的に”―――
今までは、緊急的な事態の場合には、女禍様がそうしてきていたものなのに・・・
それがいつの間にか、女禍様のお株を奪うようなことを、アヱカ自身がなしている―――・・・
それが、こういう出来事は、感覚的には判ってはいても、なかなか頭の内では着いて行き難(がた)いもの・・・
しかも―――追い討ちをかけるように・・・〕
ア:・・・このままでは、さぞかしお辛いことでしょう―――
あなた様も・・・あなた様が、かつて愛した人も―――
けれども、悲観をすることはございません。
このわたくしが、あなたを彼岸へと戻し参らせましょう―――・・・
イ:えっ・・・女皇様?! そんなことが・・・出来るのですか―――?
〔すると此方からは、『今更、“出来ません”とは、申しにくくなりました・・・それだけのことが、今ここにはあるのです―――』
と、述べられ、“屍人”を再び彼岸へと戻らせる手段を講じさせ始めたのです。
その様子を見たイセリアは、あることに気付き始めたのです・・・。
確かに―――先ほどまでは、眸に怒色(どしょく)を漲(みなぎ)らせ、雰囲気的にも近寄りがたい威圧感を漂わせていたのに・・・
それが今は、威圧感はそのままに、眸の色は・・・どこか哀しみを帯びた色に変わっていたことに―――〕