≪七節;覚醒(めざ)め始めた存在(参)≫

 

 

〔それに・・・この方のほうでも―――

不浄なる存在であるジュヌーンを見たとき、彼に向かって何かを訊こうとしていたとき、

自分が身体を借らせてもらっているアヱカ本人が、強制的に自我を出してきた・・・と、云うことに、

女禍様は驚いていたのです。

 

 

今まで・・・度々、アヱカが窮地に陥りそうになったとき、

女禍様が入れ替わって、助けていたものを・・・

それが今度は―――??

 

信じられなかった―――・・・

自分のチカラが、レゾンデートルが・・・こんなにも弱体化していたなんて・・・

 

 

それはそうと―――屍騎士(デスナイト)・ジュヌーンを、彼岸に戻らせる手段を講じた者は・・・

次第に・・・その掌の中に、ココロ休まる暖かな光を集約させ、解き放った―――

 

でも、それこそは・・・〕

 

 

イ:(こっ・・・これは―――?!!)

 

女:(そんな・・・っ?!! これは、神霊術(スピリチュアル)!!

  アヱカ・・・どうして君が―――)

 

 

〔それこそは・・・この世における魔術の一形態―――けれども、人間の扱える領域ではない・・・・

それほど、高度な知識と精神を強要させる、超高等魔術―――“神霊術”<スピリチュアル>・・・

 

それは―――・・・長年、アヱカという人物の身体に自らの魂を宿し、

アヱカ本人とともに、その身体を共有させてもらっていた女禍様にとっても、驚くべきことでした。

 

エルフという種族ですら、会得しがたいこの術を・・・

それを、こともなげに行使した、人間―――・・・

今までは・・・その片鱗すら、垣間見せたことなどない・・・人間―――

 

 

アヱカ・・・君は、私の知らないことを・・・今まで隠し通していたのか―――?

だとしたら・・・どうして、今更・・・それを見せようとする気になったのか―――?

君はまだ・・・私の知らないことを・・・隠し持っているのか―――?

 

アヱカのことは、その生まれたときより知っている―――

そう自負していた女禍様ですら、知ることのなかったアヱカの秘密・・・

 

その、驚愕するに足る事実を前に、ついぞ狼狽してしまう女禍様・・・

 

それでも―――デスナイトの浄化は始められ・・・〕

 

 

ジ:うぅ・・・あぁ―――・・・

  ありがとう・・・この場を借りて、お礼を云わせていただきます・・・。

 

  ボクは・・・確かに一度、この世から去った人間です・・・。

  けれども、それを強制的に甦らせた者がいるのです・・・。

 

  他にも・・・数名・・・やはり、今のボクのように、過去に死んだ人間のようでしたが・・・

  気をつけて・・・彼女たちは、ボクと同じように・・・すでに一度身を滅ぼしている存在・・・

  普通に斬ったり―――などしただけでは、存在は滅せられない・・・

 

  ボクを・・・彼岸に戻してくれる・・・この術を行使できるあなた・・・

  それか、もしくは―――・・・

 

 

ア:・・・判ってございます―――。

  もう一つは、聖の属性でエンチャントされた武器でのみ、傷つけられ昇華させられる・・・

  けれども、その際には、身体も御魂(みたま)も切り裂かれてしまう・・・

  極楽浄土へと旅立たれるのに、果たしてそれが正しいといえるでしょうか―――。

 

  わたくしは・・・そうは思いません。

  たとえ、それでは・・・極楽浄土と云われた処が、たちどころに地獄へと変わってしまうことになりかねないのです・・・。

 

  けれど・・・このわたくしの術式は―――・・・

 

  ・・・さあ―――あなた様も、彼岸へと旅立ちなさい、そして身の穢れを払い落とし、涅槃へと向かうのです。

 

ジ:そうですか・・・ありがとう―――

  イセリア・・・ボクはまた、君に会えて嬉しかったよ―――

  君が、他の人のものとなってしまうのは、ちょっと悔しいけれど・・・

  ボクは君の倖せを願うよ―――・・・

 

  それから・・・あと一つ、警告を―――・・・

 

 

〔その存在の周囲(まわ)りを・・・暖かな光が包み・・・徐々に浄化を始めていきました。

 

その作用は、不思議と痛みはなく―――むしろ、心地よい安らかなる感覚があったのです。

 

それに、ジュヌーンは、ここにこうして現れてしまったことを、後悔してはいませんでした。

 

なぜならば、愛する人の、その後が気にかかっていたから―――・・・

 

彼という存在は、故国のハイネスブルグにおいても、やはり他の国の男たち同様、

頼り甲斐のない者の一人として捉えられていました・・・。

 

けれども、そこにいたのは―――愛する人を一番に気遣った存在であり。

あることの伝達人(メッセンジャー)でもあったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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