≪八節;屍人からの警告≫
〔そして、この伝達人からのある警告を受け入れ、表情が固まってしまう二人が・・・〕
イ:そんなっ―――! カルマが軍備を再編して、今まで尖兵として繰り出していた人間の兵を総て除き・・・
古来より主力としていた、魔物を中心とする隊編成の導入を取り入れた・・・ですって?!!
ア:それに・・・なんだと?!
兵役を免除された人間も、奴隷同然の扱い??
一体なんだと思っているんだ―――! 今まで忠義を尽くしてきた者達だったのだろうに・・・
それを、容易(たやす)く切り捨ててしまうなんて―――!!
イ:へ・・・陛下―――・・・
ア:・・・イセリアさん、哀しんでいる場合ではないよ―――
これは、早急に武官たちを招集して、意見を聞く必要性がある・・・
急いで通達を―――!!
イ:・・・畏まりました―――
(この方・・・また、先ほどとは話し方が違ってきていますが・・・
それに、感情にしても、怒色をこれほど露わにする方ではありませんでしたのに―――
それより・・・ここは、こちらのことが大事ですわね―――)
〔屍人であるジュヌーンが、危険を顧みず伝えにきたこと―――・・・
それは、カルマ軍内部での再編成―――
以前からの人間兵の兵役を免除する代わりに、カルマが古来より主力としてきた兵・・・魔物兵―――
オークやゴブリン、グレムリンやリザードマンなどを主力とした、屈強・精鋭の兵(つわもの)・・・
元来、人間よりも身体能力に長けていたがゆえに、半ば納得のいく内容だとも思えるのですが・・・
だとしたら、今まで邪悪の勢力に屈し、悪逆非道の限りを尽くしてきた、あの国の人間たちは・・・?
それが、現在では・・・“叛乱の恐れがある”とし、奴隷同然の身分に落とされ、
まさに生き地獄の苦しみを味わわされていたのです。
それにしても―――イセリアが不思議に感じていたのは、女皇であるアヱカが、
いつの間にか、いつも通りに戻っていた・・・と、云うこと。
先ほどまでは、確かに今同様に怒色を漲(みなぎ)らせていたものの、
言葉や表情には、それは顕著には出てはいなかった―――
なのに・・・ジュヌーンからのメッセージを受けた直後から、
表情は険しくなり始め、言葉の有り様にしても、怒りの感情そのままを出していた・・・
そのことを訝(いぶか)しんでは見たものの、今はそれよりも大事なこと―――・・・
ただでさえ手強かったカルマが、戦力の底上げを図ってきたことにより、
一層の注意を傾けなければならないのです。〕