≪二節;黒き処に蠢く意思≫
〔然して―――やはりその意思は存在したのでした。
今―――パライソの国へジュヌーンを送り届けてきた者が、
コキュートスの一室へと戻ってきて・・・〕
シ:ごくろう―――だったね。
ジ:・・・これで、良かったのでしょうか―――お姉様・・・
シ:おやぁ〜ん? ひょっとして怒ってんのかい? デルフィーネ・・・。
ジ:それはそうでしょう! 今回のことは、ひょっとするとあの子を憤慨させるかもしれない・・・
そんな危険性を孕んでいたともいうのに・・・!
―――〜 ピ☆ キィ〜ン 〜―――
ジ:はっ―――!!
シ:・・・どうやら始まったようだねぇ。
けれども―――なんだ?この反応は・・・
ジ:あの子の―――シャクラディアの反応じゃない!
これは・・・月の裏側からの―――あの女の艦からの干渉!!
そんな・・・お姉様!あなたのはじき出したデータとはまるで違うじゃないですか!!
シ:ほほ〜う・・・これはこれは―――
ジ:ナニを感心してらっしゃるんデスメタル!!
あ・・・あの忌まわしい女があぁ〜〜!!
シ:そう興奮するほどのことじゃないよ―――
それに見てみな、お前が心配するようなことでもないだろ?
ジ:えぇっ―――・・・確かに、行使されているのは神霊術・・・って、
あの穢れた存在がぁ? なんかの間違い・手違いの類じゃないんですぅ??
ジ:仮に―――だとしたところで、こいつは思いもよらない、いい方向での計算違いのようだ・・・
うんッ〜♪ 重畳―――重畳―――♪
〔ジュヌーンという“屍人”が、シャクラディアの堅牢な結界をすり抜けられた事情は、
やはり斯くの如く存在していたのです。
かつて―――“古(いにし)えの皇”の傍らに存在し、かのお方を宜しく補佐していたという“古えの丞相”・・・
大魔導師<ロードマンサー>であり、敵も味方も、ある呼称をして畏怖の対象としていたという・・・
マエストロ・デルフィーネ
その人物は、本来ならば天からの啓示を受け、その年にとある場所・・・
北の最果てにあるという地下迷宮―――{ハーヴェリウスのラビリントス}まで赴き、
そこで“古(いにし)えの丞相”の人格の介入を受ける・・・はずだった―――
なのに・・・その年、もう何十年も前に、カルマからの侵攻を受け、
その動乱に乗じて、ある魔将の手にかかり―――落命してしまった存在・・・
ジィルガ=式部=シノーラ
そう―――彼女こそは、当時騒がれていた“女禍の魂を持つ者”などではなく、
偶然にも同名であった、“古(いにし)えの丞相”・・・
ジィルガ=エスペラント=デルフィーネ
その方の生まれ変わりだったのです。〕