≪四節;キリエの決意≫
〔それよりも―――今回の作戦会議で、自分自身を言い貶(おとし)める格好となったキリエと、
そんな彼女のよき理解者である副将のヒは―――・・・〕
ヒ:なあ―――キリエさんよ・・・
キ:―――どうしたの、ベイガン。
ヒ:“どうしたの―――”じゃねぇよ、あんたもよくよく涼しい顔をしていられるよなぁ・・・。
キ:・・・いいじゃない、あんな化け物が横行してちゃ、おちおち生活できないでしょう。
ヒ:・・・そうは云うけどさぁ―――実際にオレたちは、幾度となく助けられて・・・
キ:・・・ベイガン、いい機会だから云っておいてあげるわ。
ヒ:はい? なにを―――・・・
キ:私、もうならないから。
ヒ:・・・え゛え゛〜〜っ?!! ちょ―――ちょっと待てくれよ!
おい!どういうことなんだい―――そりゃあ・・・
キ:―――バカ!声大きい!
ヒ:あっ―――(わわわ・・・)
・・・で、でもよ? 今度からは雑魚でも手強くなるんだろ??
キ:あのねえ〜・・・(はあ〜やれやれ―――)
じゃあなに? これから戦おう―――って前に、『実はあなた達の上官は化け物でした〜♪』
・・・って、云っちゃうわけ?
そんなねえ―――・・・“前門にトラ後門に狼”状態で、兵が戦えるわけがないでしょうに・・・。
第一・・・あなたの誤解を解くのにだって、こっちはえらく大変だったんだから。
ヒ:う゛い゛・・・それ云われっちまうと〜・・・けれどもよう―――
キ:大丈夫―――なんとかなるわよ・・・。
魔物兵といっても、若干人間の兵士よりしぶといだけだから・・・
それに―――・・・私も、今までのように奥に引っ込んでばかりはいられない・・・
この人間の形(なり)で、闘わざるをえなくなってくるでしょうね―――
〔唯一、そんなキリエの事情を知る立場にいた、虎髭将軍・ヒは、
作戦会議室を出てからすぐの休息所で、キリエに向かいながらどうして今回の話し合いで、
自分自身を言い貶めるようなことをしたのか―――と、質しました。
するとキリエは、したり顔をしながら、いわばもう一人の自分自身である“蒼龍の騎士”の危険性を説いたのです。
そして、そのうえで、これからはあの姿で人々の前には出ないことを誓ったのです。
ヒは―――知っていました・・・
目の前にいる女性が、どんな存在で―――どんな苦悩を抱えていたか・・・を。
彼自身の前に、突如として現れた ハイランダー ―――・・・
その存在こそは、かつて“古(いにし)えの皇”に忠誠を誓い、
自分達・・・弱者の立場にあった人間を、飽くことなく救ってきた者を―――
そんな彼女を・・・勢いあまって、蔑(さげす)んでしまったことを・・・
それでも・・・彼女は―――
自分達に、背を向けなかったことを―――・・・〕