≪五節;叱責≫

 

 

〔それはそれとして―――次の日の朝議にて・・・

諸官たちは、意外に過ぎる女皇の一面を垣間見るのでした。〕

 

 

ア:―――お待ちなさい・・・

 

イ:はっ、なんでございましょう―――

 

ア:今・・・なんと申しましたか。

  もう一度お云いなさい―――

 

 

〔その日に出された政策に、反対する者が現れました―――

 

しかし、その政策は、前日よりかねてから、婀陀那・イセリア・タケルの三者による協議によって、

その日の朝議で取り上げられ、すでに実施段階まで進められ、あとは女皇の承認を得るだけ・・・だったというのに―――

 

けれども、そのある方の一声により、この政策は否決されてしまったのです。

 

ならばなぜ―――アヱカはこの政策に否を唱えたのでしょうか・・・〕

 

 

ア:・・・やはり、その政策は認めるわけには参りません。

婀:―――ですが陛下、この政策は妾たちが良かれと思って・・・

 

ア:婀陀那さん―――・・・よもやあなたの口から、そのような言葉が漏れようとは・・・

婀:―――なんと?(妾の・・・口から?)

  ・・・しかし―――アヱカ様・・・

 

ア:―――もうやめてください。

  今日の朝議はこれまでとします、これ以後再びその政策を口にはさむことをしてはなりません。

 

 

〔意外―――と云えば、意外でした・・・。

それというのも、滅多と怒りの表情を出されない、温厚な女皇陛下―――と、世間でも認知されていたのに、

それが、コト一つの政策に関しては、まさに烈火のごとく怒りを露わにしたのです。

 

これには、何も婀陀那ならずとも、イセリアにタケル―――その他諸官たちも驚くところとなり、

ならばどうして、アヱカは一つの政策に対して、これほどまでに怒りを露わにしなければならなかったのでしょうか。

 

それは―――・・・他ならずとも、やはりその政策こそに問題点が隠されていたから・・・

 

そのことを、女皇であるアヱカは的確に見抜き―――

ただ一人異を唱えたのですが・・・

 

朝議を終え、自分の部屋へと下がろうとするアヱカに、

もう一度だけの直訴をしてみようと試みるのですが―――・・・〕

 

 

婀:姫君―――少々お待ちを!

ア:・・・なんでしょう―――婀陀那さん・・・

 

タ:どうかご再考を―――・・・

イ:承りたくば―――・・・

 

ア:タケルさん・・・に、イセリアさん―――

 

  ・・・―――なるほど、そういうことだったか・・・今回の政策は君達が・・・

 

タ:はい―――。

  ワシらの軽んじた協議にて、此度の朝議の議事にまで上らせたことは、恥じるべきところであります―――

  ・・・が―――これは双方のためを思っていっていることなのでございます。

 

ア:双方の・・・ため―――?

  それは、誰と誰のことを云っているのだ―――

 

タ:それはもちろん―――・・・

 

ア:“民”のためだ―――と、そう云えば、この私が得心するものと思ったか・・・

  それは君達の独りよがりではないのか。

 

  “国”と“国”とが一つになる―――それは確かに聞こえはいい、

  だが、国の統治者がそういう考えであっても、官や民達は真に納得しうるだろうか。

 

  私はそうは思わない、“併合”という話しは、いわば国一つがなくなってしまうことを意味するんだ。

 

タ:(国一つが・・・なくなる―――)

 

ア:判ったのなら、もうこのことは蒸し返さないで欲しい。

 

イ:―――ですが、アヱカ様・・・

 

ア:黙れ―――勅命である!

 

 

〔“勅”なる命令―――『勅命』は軽んじて出すものではない・・・

それほど勅命とは重きものであり、それを破るとなると遍(あまね)く大逆を招く結果となる。

 

けれども・・・そこでアヱカの口にしたのは『勅命である。』―――

この一言により、そこにいた者たちは口をつむがざるを得なくなってしまった・・・

 

もし―――このことに反し、再びそのことを口に出そうとすれば、厳罰が待ち受けいたことは間違いなく・・・

それは、アヱカの寵愛を受けていた彼らであったとしても、免れえぬところだったのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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