≪三節;主従問答≫
〔それはそれとして―――実はアヱカが、この食堂を訪れたのには、ある理由があったからなのでした。
・・・とは云えども、初めからそのことを訊くのではなく、徐々に―――〕
ア:―――ご馳走様・・・。
とってもおいしかったよ、暖簾に偽りなし・・・と、云うところのようだね。
サ:それにしても―――あなた様もお人が悪いですよぅ・・・
ア:その格好―――見られたくなかった?
でも・・・よく似合ってるし、そのほうが女の子らしいよ―――
サ:・・・けど―――私、ガサツだから・・・
ア:・・・そういえば―――今回の適正試験を受けなかったようだけど、
どうしてなのかな・・・
サ:―――だって・・・吸血鬼である私が上司〜だ、なんて・・・
人間たちにどう云えと?
ア:そうは云ってもキリエは―――・・・
サ:あの人は―――グノーシスもあるし、私よりかは人間の姿になるのが上手だから・・・
それに―――私は、血の臭いのする戦場に出ると、元の性分が出てしまって・・・
ア:けれど・・・人間たちを愛する気持ちは、あの頃より少しも変わっていないんだろう―――
それで十分だよ―――・・・
サ:―――あっ、主上・・・
ア:おいしかったよ―――お代、ここに置いておくね・・・
〔最後の、お口直しのお茶を啜(すす)り―――ご馳走になったお礼の言葉を述べると、
少しばかりの愚痴を言うサヤと、どうしてこの度の適正試験を受けなかったのかの理由を訊こうとするアヱカ・・・
そこでサヤは、どうして試験を受けなかったのか―――の理由を述べるに至ったのです。
古の昔―――7万年前には判らなかった事・・・
自分たちが、日頃従えている人間の兵とは、また別の種族であり・・・
敵方であるカルマの魔物兵とは、同じ種族であったこと・・・
丁度その頃には、自分たちの上官であった“驃騎”“車騎”両将軍が健在であり、
その他の人間の将官たちには口を吐(つ)かさないでいたのですが・・・
その後戦乱は収まり―――平和となった後に、知ってしまった事実・・・
――自分たちは、人間を喰い物にする側の立場・・・――
当初は否定をしていたものの、生来からのその種族であるが故の性癖・・・
“血への渇望”―――・・・
それは、キリエが“ハイランダー”であるが故の―――
サヤが“ヴァンパイア”であるが故の―――・・・
哀しき性でもあったのです。
けれども、彼女たちが自分の欲望のままに突き進まなかったのは、
偏(ひと)えに、“皇”であった方と、自分たちを養育してくれた方の躾(しつけ)教育がなっていたから・・・
“ハイランダー”であるキリエは、自らが有するグノーシスによって、
身体機能を一時的に老化させることによって、その欲望を抑えられていた―――
一方の“ヴァンパイア”であるサヤは、彼女を養育する方が“少女趣向”(いわゆる可愛らしいモノ好き)であったがため、
幼少の頃からその系統の格好(いわゆるゴスロリ系)は日常的だったのですが・・・
―――月日(つきひ)というものは残酷なものでございまして。
段々と、身も心も成体になるに従い、養育してくれる方の趣向とはかけ離れたものになり、
今ではすっかりやさぐれ―――いや、もとい・・・
少しばかりワイルドな趣向になっていったのです。〕