≪五節;身に覚えのないこと≫
〔“古(いにし)えの皇”であった女禍様も気にはなっていたこと・・・
それは、人間ではない種族であっても、人間の味方をしてくれる者達がいる―――と、云うこと・・・
そして、その者達は、意外にも肩身を狭い思いをさせられている―――と、云うこと・・・
だから―――だったのでしようか・・・
そのことを往々にして気付くや否や、シャクラディアに戻った女皇は、
やおらしてある者を呼び寄せたのです。〕
茜:―――お待ちしておりました。
葵:陛下よりお話は伺っております・・・どうぞお入りください。
〔女皇の部屋を護る近衛の二人―――茜と葵により開かれた扉から入室する人物・・・〕
ゼ:〜あの・・・お呼び―――でしょうか・・・
ア:ああ―――来てくれたようだね・・・ゼシカ。
ゼ:は・・・はい。
えぇ〜っと―――あのぉ・・・何か仕事面で不手際があったのでしょうか・・・?
ア:えっ? いや・・・違うよ。
今日はそのことで呼び立てたんじゃないんだ。
〔この国の女皇陛下に呼び出されて入室したのは、シャクラディア城の整備全般を受け持っている、
ゼシカ=ノーム=ヴェスティアリ なのでした。
けれども、彼女はどこか落ち着かない様子―――・・・
それもそのはず、元々技術職でもある彼女が、この国で一番のお偉方である女皇に、
直接呼び出されたということは、どこか彼女の仕事に不手際が見つかり、
そこを叱責されるもの―――だと、思い込んでいたからなのです。
けれど―――実は、女皇がゼシカを呼び出したのは、そういうことではなく・・・〕
ゼ:えっ・・・ええ〜っ?!! あ、あの人の―――・・・
ア:そう・・・あのヤノーピルという人、今はどこにいるのかと思って・・・
ゼ:あっ・・・ああ〜―――えぇ〜っと・・・
し、知りません―――そんな人・・・
ア:・・・ゼシカ? ―――どうしてだい?
あのときには私もいただろう、それを知らないはずは―――・・・
〔しかし―――ゼシカは、その答えに戸惑いました・・・。
今、自分の家にかくまっている“黒き翼”の人、レイヴンのヤノーピルのことを・・・
どうしよう―――この方が、ついに・・・あの人の処分を決めてしまったんだ。
人間ではない、私がかくまっているあの人のことを―――・・・
ゼシカは、その人が人間ではないことは、よく理解していました。
それに、その場には女皇もいた―――・・・
それが、とてもかばいきれなくなり、ついにヤノーピルの処分を言い渡すために、
今、自分をこの場に呼び出した―――そう思ってしまったのです。
すると、女皇からは―――・・・〕
ア:・・・どうやら、誤解を招いてしまったようだね。
まあ確かに、この時期にこの話をするというのも、一因はあったと思うよ。
けれどもそんな心配はしなくてもいい―――いや、むしろ・・・
彼にしてみれば、背中の翼を堂々と出せれるいい機会かもしれないんだよ。
〔確かに―――女皇はそう云いました・・・『彼の背中にある翼を、堂々と出せれる』・・・と―――
ではどうしてそういえたのか・・・その理由を詳しく聞くと、
ゼシカは嬉しさのあまり、涕をこぼしそうになり、そしてこう云ったのです。〕
――ありがとうございます・・・これでやっと、あの人も窮屈な思いをしなくてすむでしょうから・・・――