<第八十九章; 士 魂
>
≪一節;苦戦に継ぐ苦戦≫
〔―――それは・・・西域の国、ラージャでの出来事でした。
元々この国の出身でありながら、現在では他国の官となっている者からの助言を受け、
自分たちの国の北に位置する、“漆黒の国”カ・ルマからの侵攻に対処するために、
100もの“防塁”を増設したのです。
また、それにより・・・“七魔将”の一人である ザエルラ=タナトス=スービエ を討ち果たすことに成功―――
・・・と、そこまでは良かったのですが―――
その ザエルラ に代わって、<南征>の任についた ベリアス という“魔将”により、
100もあった“防塁”総てが、かの者の手により悉(ことごと)く蹂躙を受け・・・
現在では、ラージャの都でもある ワコウ に、黒き軍団は迫りつつあったのです。〕
ノ:(ノブシゲ;タケルの親友にして、ラージャの重鎮)
・・・くそう―――もうあんなところにまで迫ってきたか・・・
チ:(チカラ;タケルの実弟にして、ノブシゲと同じくラージャを支える重臣)
老中様―――今、前衛基地であるマルメの砦が陥(お)ちた模様でございます・・・。
将:こちらはキヨツーの砦が・・・ナニ?オバリの砦まで陥(お)ちただと??
〔あまりにもの攻勢に、もはや防ぎきれないと判断したノブシゲたちは、
早々に防塁を放棄し、都城・ワコウにて、徹底抗戦する構えを見せたのです。
しかし・・・そこでも、野に人がいないかの如くに蹂躙が開始され、
九つある防衛のための城塞の三つまでもが、一両日のうちに攻め陥(お)とされてしまったのです。
それを見聞したノブシゲは―――・・・〕
ノ:おのれ―――! このまま、好き勝手にはさせん!!
よし・・・これから、こちらから打って出るぞ―――
誰ぞ、それがしとともについてくる者はいないか―――!!
〔すると、此方からは『応――!』という掛け声とともに、我こそは・・・と、云う者が後を絶たず、
瞬く間のうちに決死の隊が5千と募(つの)り、カルマの野望を打ち砕かんとするため、
士気揚々と出陣をしたのです。〕