≪二節;苦境の中の本音≫
〔―――ところが・・・
そんな彼らの、決死の思いを嘲笑(あざわら)うかのように、魔将・ベリアスの武器はうなりを上げ、
大地は、ラージャの将兵の血の色に染め上げられてしまったのです。〕
ノ:むうぅぅ・・・無念だ―――・・・
こちらとて、ただ手を拱(こまね)いていたというのではないのだが・・・
チ:こちらの戦術が、全く通用しないというのは、
あたら“武”の“暴”だと決めてかかった、手前立ちの所為もあるのでございましょうか・・・
ノ:―――いや・・・そう決めてかかった覚えはない。
それはそれがしだけではなく、左近、お主とて同じ思いのはずだ。
ただ―――・・・惜しむらくは、計略に使う兵の数が足りなかったか・・・
チ:―――ですが・・・前(さき)のガク州の例には、手前たちより少ない兵の数で、
彼奴(きやつ)らめを追い返しているのですぞ?
ノ:・・・左近――お主忘れておりはせぬか・・・
そのガク州の役と、この国に突如として現れた、あの怪異を・・・
チ:―――!
・・・蒼龍―――!!
ノ:そうだ―――・・・
あの例の怪異と、ガク州の将兵とが連携を取れあっていたのならば、
あの州が、カルマの色に塗り替えられなかったことも解してくる・・・。
だが・・・そうだというならば、最初にわが国にカルマが攻め込んできた折に、現れた存在は何だというのだ?
あんな存在が二つとあるのならば、それがしたちとて心強いのだが―――・・・
〔5千者兵それぞれが、“死兵”となりて一斉に立ち向かった―――
“死兵”とは、すでに死を覚悟した兵士たちであり、
そんな覚悟をした者達は、もう後には思い残すことなどないことから、
生きている心地のしている兵にしてみれば、これほど心胆寒からしめる存在はなかったのです。
けれども―――“魔将”は、そんな者達の決死の思いですら、『まったく意に介さぬ』―――
・・・と、云った表情で、文字通り死兵たちを阻む壁となったのです。
そこでノブシゲは、“玉砕覚悟”―――で、突撃をかけようとしたのですが、
憂国の将の一人である、チカラ=左近=シノーラによって思い留められ、
現在ではワコウ城に再び立て篭もって、篭城戦の構えを見せたのです。
・・・すると―――たまたまそこで持ち上がった話題の中に、
例のガク州攻防戦の折のことと、ラージャでの最初のカルマ侵攻戦に顔を出してきた稀有なる存在・・・
『蒼龍の騎士』のことが話されたのです。
蒼キ龍と―――半身が女性の騎士である存在・・・
カルマの将兵たちと、その意義を同じくするはずであるのに・・・
嬉々として、彼らを討っているように見えたのは―――ナゼ・・・?
そんな疑念を頭の隅に置きながらも、
今このときに、もう一度だけ自分たちの国を救うために、助力願えないものだろうか・・・
―――と、誰しもが思っていたことだったでしょう。〕