≪三節;報せ〜故国より・・・〜≫

 

 

〔それからしばらくが経ち―――ノブシゲたちがワコウ城へ篭城を始めてから、三つの週が経とうとしていた頃・・・

 

場所は、シャクラディア城にて―――・・・

 

突如として開門を迫る言葉と、開門されて間を置かずに入ってきた存在に、

場内は一時ざわめき立ちました・・・

 

それというのも、開門と同時に入場をしてきたのは騎兵であり―――

問題なのは、その騎兵の身体には、いくつもの鏃(やじり)が確認されたこと―――と・・・

奇しくも、この騎兵が着付けている鎧が、さある国の―――・・・〕

 

 

タ:―――どこだ!? その者はどこにおる!!

 

 

〔“具足”と云う、西国特有の鎧に身を固めた騎馬武者が、息も絶え絶えにシャクラディア城へ入城してきた・・・

 

この一報を聴くや否や、その国の出身者であるタケルは、すぐにでもその騎馬武者に接見をしようとしました。

 

そして・・・タケルがこの騎馬武者を見るなり、吐(つ)いて出た言葉が―――〕

 

 

タ:・・・<地走り衆>―――

 

 

〔<地走り衆>とは、皆乗馬の腕前の立つ者ばかりで構成された“使い番”のことで、

特に名馬の産地で、乗馬の盛んだったラージャの若者たちの間では、

花形的な職業の一つでもありました。

 

タケルはそこで・・・身体をボロ布のようにされながらも、

あることを伝えるためだけに、ここへとたどり着いた彼を見ました。

 

しかも、彼の咽喉は、“開門―――”の言葉を最後に、用を足さなくなっていたのです。

 

けれども・・・タケルには、自分の故国で何が起こっているかを、瞬時にして察知できました・・・

 

あの頑固者が―――おのれの意地を棄てて・・・自分にまで使い番をよこした事由・・・

 

それこそは紛れもなく―――・・・〕

 

 

婀:あなた・・・いかがなされ―――(うっ!!)

タ:今まで―――大儀であったな・・・今、楽にしてやるぞ・・・

使:――――。(ニコ・・)

 

        ズ ド ッ          

 

 

〔今わの際に永らえさせてやるのは、かえって もののふ にとっては恥であり―――

逆に止めを刺してやるのが、“介錯”と呼ばれる、西国特有の慣わしでもあり、

または“武士の情け”と呼ばれるものでもあったのです。

 

そう―――そこでタケルは、何の躊躇(ためら)いすら見せるまでもなく、

もう息も絶え絶えである騎馬武者の脇差を借り、彼の咽喉元を一突きにして楽にさせたのです。

 

けれども、その光景は、事の成り行きを見守っていた婀陀那・紫苑ら東国出身者からして見れば、

異様にして不可解な行動に映ったようであり―――

 

すると―――・・・〕

 

 

婀:あなた・・・今のが―――

 

タ:・・・うむ―――今まで良く働いてくれた・・・

  お前にしてみれば非道とも思えるようだろうが、この先もう苦痛を伴わないということでは、

  この者にしてみれば少しは楽になったかも知れぬ・・・

 

  それに、この者が一言も発せずとも、ラージャで何が起きているかを知ることができた・・・

 

  婀陀那―――早急に軍儀を開く準備を!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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