<第九章;竹林に棲まう者>
≪第一節;黒き衣の外交官≫
〔さて――― ここで一時、お話しの舞台を移動させてもらって―――・・・
この国は、“西国一”の呼び声も高い、『列強』の一つ、 ラー・ジャ ・・・・。
(ここでご記憶の事と、思いまするが・・・そう、ナオミとステラが、一時その話題で気まずくなってしまった単語がこの国名)
その都である ワコウ より外れたる事数十里、その場所には竹林があり、その中には草庵が・・・・
そう・・・なんと、この閑散とした場所に、居を構えている人物がいるというのです。
その人物が、どうやら、今、庵にいるようです、では―――・・・その容姿を窺うには――――
程よく鍛え上げられた身体―――
七尺(約210cm)はあろうかという巨躯―――
凛とした顔立ち―――
その顔には無精ひげもちらほら―――
そして
最も印象深いのは
棗色の肌―――
に
琥珀色の瞳―――
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そして、その者が、武一辺倒ではないという証に、自室に積み上げられた、書物の数々―――・・・
その人物とは、一体誰――――・・・・
それはそうと、この草庵に、誰かが訪ねて来たようです。
ここの主が在宅かどうか―――・・・を、そこで掃き掃除をしている童子に、話しかけるその人物・・・。〕
誰:あぁ〜・・・これこれ、今ここの主人は在宅かな?
ラ:(ラクシュミ;12歳;男性;ここに住み込みで働いている童子)
えっ? あっ、ハイ、先生なら、今、ご自分の部屋にいると思うよ?
ユ:(ユミエ;22歳;女性;ラクシュミの姉)
ちょっと―――ラクシュミ? 知らない人・・・通しちゃいけないって、先生から言われているでしょ?
ラ:あっ―――そっか・・・いっけね。
ス:(スミルノフ=ラッド=ヴィザール;48歳;男性;一見すると凡庸なる初老―――に、見えるが、実はこの者、とある国の外交官。)
あぁ―――・・・いや、一応は、事前に会う約束をしてたのだがなぁ・・・・。
ユ:えっ??! あっ・・・そ、そうでしたか・・・済みません。(赤っ)
ラ:へッへへ―――ッ、オレしぃ〜らね♪
ユ:コ―――コラッ! (って)ああ―――っ、す、済みません・・・せ、先生ですね?
先生でしたら・・・奥のほうに―――
ス:そうですか――― では、お邪魔させてもらいますよ・・・・。
ラ:ねぇ――― 誰だろ?あの人・・・・
ユ:さぁ・・・でも、着物の帯まで黒い―――・・・だ、なんて、ちょっと気持ちが悪いわね。
〔そう・・・今の、この姉弟の会話を聞いての通り、この客人は、来ているその着物まで『黒い』そうで・・・
だとすると、今までにも出てきた、ある国の特徴と、重なり合わせられませんか―――?
それはいうまでもなく・・・
兜
鎧
旗指物
馬具
までもが、『漆黒』をなしているという・・・・
――カ・ルマ――
の特徴と・・・
それにしても・・・このスミルノフなる人物、この辺鄙な場所まで来て、何をするつもりなのでしょう―――・・・〕