≪五節;コンゴウ攻防(弐)≫

 

 

〔今回、残るラージャの勢が引き篭もるコンゴウに攻め入るため、カルマ軍を率いていた存在は・・・

以前のその者が知る、彼女たちではない彼女たちを見るにつけ、どこか嬉しくもありました。

 

けれども―――現在は違う・・・

 

現在は、自分の姉である人の策略を完成させるために、望まぬ協力をしている・・・

それが喩(たと)え―――愛する自分の末の妹や、教え子でもあるキリエたちと、

敵対することになっても・・・

 

だから―――・・・

 

 

キリエとサヤは、ラージャの将から目を盗むようにして、

カルマの兵力を、的確に討ち滅ぼしていきました。

 

すると―――・・・〕

 

 

キ:―――うっっ!! こ・・・これは!!

サ:そんなっ―――! ヴ・・・ヴェリザの方陣!!

 

 

〔キリエとサヤが・・・ある地点に到達すると、“それ”は発動しました―――

(あらかじ)め、仕掛けておいた・・・=トラップ=と呼ばれるモノ―――

 

地上と上空に・・・刻まれた―――“無効”を示す効果が付与された=魔方陣=・・・

 

彼女たち二人は―――遠い昔に・・・この魔方陣を手足のように操る 大魔導師 を、たった一人知っていました・・・

 

それに・・・自分たちでは、この術式に抗(あらが)いきれないことをも、知っていました・・・

 

だから―――だったのです、その魔方陣・・・≪ヴェリザの方陣≫によって、

(さら)け出されてしまった、彼女たち本来の姿を―――・・・〕

 

 

魔:なっ―――!? お・・・お前たちは〜!!

魔:ヴ・・・ヴァンパイアに―――蒼龍!!?

 

キ:ぅ・・ぐうっ〜! 擬態の・・・強制解除―――!!

サ:・・・これができるのは―――あの方しかいない・・・けれど??

 

キ:―――詮索は後回し! 直接出向いて確かめる!!

サ:ああ―――そんなことがあって・・・たまるかっ!!

 

 

〔その方陣に仕組まれていた “無効”<ヴォイト> 効果によって、

人間の姿を強制解除されて、彼女たち本来の姿を曝すこととなったとき―――

敵であるカルマ兵だけでなく、一番に驚いたのは彼女たち自身だったことでしょう・・・。

 

けれども、≪ヴェリザの方陣≫という、高等な魔方陣を操れる存在を知っているだけに、

直接視認して確かめようとはするのですが―――・・・〕

 

 

キ:ああっ―――・・・

サ:あれは―――・・・

 

ジ:――――・・・。(クス・・)

 

キ:し―――しまっ?! これは・・・『転移』の・・・

サ:ウィルドグラフ・・・そんなぁ〜――――・・・

 

・・・・・・・・。

 

〔やはり―――“あの方”だった・・・

この度、ラージャの残党を一掃するため、派遣されたカルマ軍を率いていたのは・・・

彼女たち二人もよく知る、“古(いにし)え”という過去に、=丞相=と呼ばれていた人物だったのです。

 

そう・・・アヱカの予測したことは、最悪の象(かたち)となって現れ、

しかもキリエ・サヤといえども、まるで赤子の手を捻るかのように、

無抵抗のうちに、その場から転移させられてしまったのです・・・。

 

―――ごめんなさいね・・・

 

・・・と、いう言葉を、耳に遺しながら―――・・・〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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