≪六節;的中した予感≫
〔かくして―――キリエとサヤは、コトの次第を報告すべく、女皇・アヱカに接見することなり・・・〕
ア:―――なんだって? 姉さんが・・・?
キ:・・・決して、ウソ偽りを申しているのではありません。
そのことの真偽を確かめるため、私も・・・サヤさんも視認したんです―――
サ:・・・けど―――『白の魔導師』としても知られるあの人が・・・
漆黒の―――あいつらの国を象徴するかのような導衣を着て・・・
私は・・・今でも悪夢を見ているかのような気分です―――
ア:・・・そうか―――
お前たち二人が、口を揃えてそこまでに云うのならば、見てきたことに間違いはないのだろう・・・
それに・・・私の抱いていた不安も、これで的中してしまったな―――
キ:陛下の抱いていた・・・不安―――?!
〔彼女たち二人の報を聞くなり、まるで信じられないと云ったような声質で驚く女皇・・・
けれども、全くそうであるか―――と、云えば、実はそうではありませんでした。
そう・・・アヱカ―――いえ、女禍様には、ある心当たりがあったのです。
その心当たりというのも・・・〕
ア:キリエ―――お前は少し前に、ドルメンだったここを訪れたことがあったね。
そこで当時、アストラル・バディをしていたこの私に会って、“北の最果ての迷宮”のことを云って聞かせたことがあっただろう―――
キ:“北の最果て”・・・(はっ!) ハーヴェリウスのラビリントス!!
ア:そう―――・・・私が、このアヱカの身体に潜んでいても判っていたこと・・・
ハーヴェリウスのラビリントスに安置されているはずの、姉さんのアーティファクト・・・
=ヴァーミリオン=の行方―――・・・
そして、ここ最近で私の=カレイド=が妙な反応を起こすんだ・・・。
サ:陛下の―――=カレイド・クレスト=が・・・?
ア:ああ・・・どこか寂しさ余って、泣いているような―――そんな感覚だった・・・
キ:で―――では・・・やはりあれは、本物の丞相閣下!!?
ア:そうと見て間違いはないだろう―――
よし、至急に朝議を開く! これは最優先事項だ!!
〔当たって欲しくない予想が当たってしまう―――とは、世の常としたところで・・・
しかし、この場合に関しては、そんな笑えもしない冗談に付き合っていられる状況でもなかったのです。
“古(いにし)えの丞相”―――往時には、政(まつりごと)や軍(いくさ)に関しても優れた手腕を発揮し、
至らない将官たちを、幾度となく正道へと導いた―――・・・
それが今となっては、七魔将たちよりも手強い相手となって、
自分たちの前に立ちはだかってくるというのです。〕