≪三節;感じる異変≫
――ところが・・・――
>副長―――大変です<
鵺:うん―――? どうしたというの、白雉・・・
>“目印”と“追尾”からの念が途絶えました・・・!<
鵺:なに? そんなバカな―――・・・
あの二つが一つところに重なることはあれ、その念が途絶えるなど・・・?!
>・・・判りません―――ですから、現場を見ていただけませんでしょうか<
〔目標である少女に悟られぬよう、気配を絶ってストーキングを開始しようとする<鵺>・・・
ですがここで―――<白雉>が放たせた式符からの反応が途絶えたから・・・と、
至急に目標を見失った地点まで移行してみたところ―――・・・
そこには・・・黒く焦げた、<白雉>の式符が二つ―――
つまり、見ての通り、=禽=たちの任務は、たちどころに一少女の知るところとなり、
あえなく焼却処分になってしまっていたのです。
その一方で・・・=禽=に標的とされた、当事者の少女は―――〕
――小賢しい真似を・・・――
――あの程度の小細工を、私が見抜けぬものと思ったか・・・――
――すでにあの二人が、この私を見ていたことなど知れたことなのに・・・――
――それにしても・・・カ・ルマも気になる行動を起こしているこの時期に・・・――
――何の目的で、この私に近づいてきたというのだろう・・・――
――・・・ここは一つ、調査の必要がありそうだな・・・――
ヱ:・・・{転送}を―――そちらに戻るのと同時に、データのサンプリングの開始を行って。
五画経ったら、結果を私のところに持ってくるように・・・
〔つまるところ―――少女ヱリヤには、<鵺>と<鳳>が自分に視線を注いでいた時点で、
自分をターゲットにしていることなど、十分に承知していたことなのでした。
それなのに―――敢えて彼女は、目印である花一輪を購入し、犬に追尾(つ)けられたというのです。
その返礼として、二つの式符を黒焦げにさせて―――・・・
その一方で、今回の任務を未遂に終わらせてしまった者達は、
自分たちの主に事の次第を報告したところ―――・・・〕
タ:なるほど・・・判った―――
ユ:(ユミエ;先ほどの<鵺>がこの人物)
申し訳ございません―――あたら渉り役を仰せ付かっておきながら・・・
タ:いや―――お前を責めているのではない。
それにしてもアヱカ様よりお教えいただいた“ゾハルの主”への案内役・・・
その意表をついて―――と、いう、奇を衒(てら)った行動には、やはり無理があったようだな・・・。
まあいい―――このワシが、コンゴウにいるノブシゲたちに、これからのことを話しおいた後、
直接にエルの町へと赴いてみよう。
〔出していた任務の指令を、未遂に終わらせてしまったことを、タケルは責めはしませんでした。
しかし彼の内でも、今回の任務は不履行に終わるであろう・・・という見解を、
すでに想定の内に入れておいたようであり―――
ならばどうして彼ほどの者が、今回に限ってはそのような手間隙を掛けたのでしょうか。
それというのも、やはり理由は存在していたのでした・・・
タケルは―――今回の事案の前に、自分の主であるアヱカから、
今回の勅命にかかわる、ある重要なことを聞かされていました。
その重要なこととは―――・・・
『帝國の双璧』≪鑓≫への案内人―――・・・
しかもその案内人は、宗教国家である サ・ライ に、居住を構えている一少女である・・・
そのことを知り、タケルには少し躊躇(ためら)いが生じていたのです。
伝説にまで昇る名将への案内役が、どうして一少女なのか―――・・・
タケルには、思い当たることが一つしかありませんでした・・・
それこそは・・・その少女の一族が、代々引き継いでいたことであり、
“案内役”というのも、少女でなくては務まらないから―――・・・
ならば・・・と、云うことで、事前にその少女の居住を突き止め、
この度のことを切り出そう―――とは考えてはいたようなのですが・・・
その考えは、存外に甘かった―――と、云うことのようです。〕