≪四節;旧友再会≫
〔―――ともあれ、今はそのことより先に済ませておかなければならないこと・・・
この度陥落した王都より、反撃を試みるために逃れた場所に、
タケル自身が赴き、ある提案を持ち出してきたのです。
そして旧友たちは、コンゴウにて会見の席を設けることとなり―――・・・〕
ノ:・・・久しぶりだな―――
タ:ああ―――・・・
ノ:まさか・・・お互いが、このような象(かたち)で会うことになろうとは―――な・・・
タ:ああ―――・・・
ノ:来た用件は判っている。
・・・が―――こちらの意地としてもある・・・。
タ:弾正―――
ノ:まあ・・・とは云っても、これは建前のようなものだがな・・・。
以前ならば、こんな強気の発言もできていたことだろう・・・
しかし―――今となっては、そんな虚勢を張る見栄も力もない・・・。
だが、このままそちらの言い成りになっていたのでは、
大殿や大納言様の死を無駄にすることにもなる。
タ:そのことは重々に承知している。
この度、ワシのほうでも“ラージャを併合してはどうか・・・”と、女皇に奏上したところ、
“汝は忘恩の徒か―――”と、お叱りを受けてしまった・・・。
しかし、お前のほうから切り出してくれるのであれば、こちらのほうとしても受けがいい。
ノ:おいおい―――それがしを利用したというのか・・・?
タ:フフ・・・いや、たまたまそうなったまでの話だ―――
ノ:―――・・・。
タ:―――・・・。
ノ:・・・では、近々そちらに厄介になると思うので、そのときにはよろしく頼むとするぞ―――
タ:うむ・・・。
〔お互いが、ラージャの台所事象を知っていただけに、
余計な肚の探りあいなどはなく、単刀直入に話題を切り出せた・・・
しかも、この度パライソ内では、非難された案件と状況が似通っていただけに、
ラージャ側から今回の件を持ち出してくれるのは、タケルのほうでも助かったことだったのです。
それはそうと――― 一方のこちら・・・
この大陸の中で、一番に高い山―――霊峰・ゾハル<標高;10,287km>・・・
その山の5~6合目付近に、よく見れば洞窟のような横穴が・・・
そう―――その横穴こそ、かつてこの山に生息しているという、ある存在の棲み処(すみか)・・・なのです。
その、ある存在の棲み処であるがゆえに、この洞窟はある名称をして、
地元であるサライ国はもとより、全国に知られてきたのです。
では・・・その―――この大陸に住む老若男女、誰しもが知りうるという洞窟の名称とは・・・〕
かつては・・・この山を覆っていた焔を―――
総て啖ったという・・・ 龍 が住まう洞窟―――
=焔龍の祠=
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