≪五節;“焔帝”見(まみ)ゆ≫
〔しかして―――今その場には何者かが居座り、かねてより検分させておいた物事の報告を拝聴していたのです。
ところで・・・気になるその何者か―――とは、人間の大人の女性の・・・騎士の姿をしていたのです。〕
騎:―――なるほど・・・ここ最近何かと騒がしかったのは、そのためだったか・・・
>ハイ・・・ソレニシテモ 左将軍様ノ ゴ活躍ブリニハ―――<
騎:フフッ・・・よせ―――身内を褒められても、素直に喜べる歳ではない・・・
それより―――・・・
〔今までにあった、旧フ国・ガク州の攻防から―――つい最近のラージャの攻防まで、
コトの詳細を、腰を据えて聞き入る者・・・
それは―――伝承の通りの『小山を思わせるかのような巨大な龍』・・・などではなく、
むしろ人間に近しい形(なり)の者だったのです。
しかも、驚くべきことに、そこには・・・近未来的な装置まで揃えられていたのです。
その様式は、あのシャクラディアにあるモノと、寸分違わない・・・
しかし―――そんなものがどうして、こんな山の洞窟の奥に・・・?
それに・・・この騎士に語りかけていたモノも、どこか電子音のようでもあり―――
しかも? そのときに出た『左将軍様―――』とは・・・?
そう―――『左将軍』とは、紛れもなくキリエのことを指すのであり、
キリエ自身もあることを・・・云うなれば、この存在のことを、今までに幾度となく仄めかせていたのです・・・
あるときは お方様 ―――そのまたあるときは キリエの母 だとか、 直属の上官 とまで記された方・・・
そう―――その存在こそ『ゾハルの主』であり・・・またの名を『焔帝』・・・
そして、この度、パライソの女皇の名の下において召喚されようとしていた、
『帝國の双璧』≪鑓≫であり、古代の帝國シャクラディアの大尉・驃騎将軍でもある・・・
すると突然―――〕
>ピ ピュイ――― ピ ピュイ――――<
騎:・・・うん? ―――どうやら、麓の仮住まいに何者かが訪れたようだな・・・。
ディスプレイ・モニターに投影を―――・・・
〔どこか・・・近未来的な・・・云うなれば、侵入者があるのを報せるかのような、
警告のためのアラートが、洞窟内部に鳴り響き・・・
この存在が、目の前にある大画面の、液晶型ディスプレイに映し出すよう言い渡したとき・・・
その大画面には、菅笠を目深に被った、ある巨漢が―――
それを見るなり、この洞窟の主は―――・・・〕
騎:ほぉう―――あの身なり・・・ラージャの者のようだな・・・
どれ―――・・・
ヱ:面白そうね・・・ちょっとからかってあげようかしら―――
〔その巨漢の姿を見て、この洞窟の主は、どこから来た者であるかをすぐに特定しました。
すると―――?
先ほどまでは、人間の大人の女性の姿をしていた者が、何かの呪縛に掛けられたかのような光を帯び・・・
なんと・・・その場には―――あの少女・・・
=禽=の二人―――<鵺>と<鳳>が、まんまと出し抜かれてしまった、
『帝國の双璧』≪鑓≫への案内人である、あの少女の姿が―――・・・〕