≪三節;“城主”に関するある噂≫
〔けれども、公主のほうもそのことには、一抹の不安を抱いていたのです。
それは・・・自身でも云っていた、“生贄”としての―――?
いえ、実はそうではなく、公主―――ルリは知っていたのです。
ヴァンパイアなる種族が、猜疑心が強く、他者を騙る術を見抜く能力を有していたことを。
それゆえ、今回の任務は、コレまでにない難解なものだと思われたのですが―――・・・
録尚書事・婀陀那が云うのには、すでに≪楯≫なる存在と渉(わた)りをつけるために、
夫が飼っている=禽=なる組織の二人を、かの地に潜り込ませている―――と、したのですが・・・
その二人というのが―――〕
鵙:(鵙(もず);=禽=の中では一番に年若である。 ただし・・・一番にキレ易い)
な・・・ナオさぁ〜ん―――やっぱヤヴァイですってぇ〜〜
梟:(梟(きょう);=禽=をまとめる集団の長。 鵙なる者が云っていたように、ナオミという個人名を持つ)
泣き言を云ってるな―――あたしだってホントは・・・
鵙:やっぱナオさんだって、ユ〜レ〜さん怖いンじゃないかぁ・・・
梟:―――っったりまえだろ〜が!!
こっちが攻撃しても、傷一つつかない・・・って云うような、あんなイレギュレーションな存在・・・
認められっかよ―――・・・
それより・・・い、行くぞ―――
〔丁度、かの杜の入り口付近で戸惑っていた“梟”と“鵙”の二人・・・
この二人が―――今回、この杜奥深くに存在するという、渓谷にあるお城を訪れるため、
ここまで来ている―――と、云うわけなのですが・・・
やはり―――と、云いましょうか、二人とも以前この場所に足を踏み入れたことがあったため、
その恐怖が甦り、足が竦(すく)んで前に進むことができなかったようです。
その一方で―――この度の勅命により、シャクラディア城下に飲食店を構えることとなった、
その“城主”の直属の部下と、その従者たちは―――・・・〕
サ:あ〜〜・・・それにしても不安だ―――
ヘ:フフ―――なにしろ、お一人では何もできませんからねぇ・・・あの方。
サ:ん・まぁ―――それもそうだけどもさ・・・
ヘ:そこのところはご安心を、子爵様―――
まづ、尽きぬことがないよう、食料は小分けにして分散、
しかも隠し場所も大幅に増設させて、すぐにはなくならないよう工夫を凝らしています。
ソ:ん゛〜〜でも・・・あの方のここ最近、触覚―――つか、勘が冴え渡ってるようなんですよねぇ。
ヘ:んぐ・・・これ、ソシアル―――そんな人の話の腰を折るようなことは控えなさい。
ソ:あらま・・・ど〜もスミマセン―――(てヒ☆)
サ:〜〜ぢゃなくてさぁ―――・・・お前ら、あの方の性格忘れたのかい?
ソ:あの方の―――・・・性格・・・あっ!そういえば!!
ヘ:人間を見ると―――・・・ですか・・・(ゴクリ)
マ:フフ―――しかも、今回ご訪問されるお二人は、
以前私たちも会ったことがある、ナオミ某とマキ某・・・だとか―――
ソ:マダラ様・・・それにしても―――ナオミ某にマキ某って・・・
ヘ:―――あっ!そういえば・・・あの二人には、お城に近づかせないように、催眠を施したままでした!
〔そう・・・ここで新たなる問題が発生―――
何でも、この四人が云うのには、もうすでに部下レベルでは=禽=たちに接触済みだったのです。
しかも、また間違ってヴァルドノフスク城に近づかせないようにするために、一種の催眠効果を掛けていたらしく、
それを解かないままでは、今回の任務は不履行―――<ミッション・インポッシブル>・・・と、なってしまうのです。
ですが・・・まあ、確かに―――ナオミ(梟)とマキ(鵙)の二人は、
決死の覚悟で、杜の内部に突入を掛けたのですが・・・
やはり件(くだん)の催眠効果が功を奏し、同じところをぐるぐると巡った挙句、
別の杜の入り口へと出てしまい、ここで堂々巡りをしていたことが判ったのです。
そこで当然―――口惜(くや)しさ余って、地団駄を踏むナオミにマキがいたのですが・・・
ここで奇しくも姿を現せたのは―――・・・〕