≪五節;泉の中の美女≫
〔いや・・・しかし―――彼女はふとしてある場所に辿り着いたのです。
この杜の中に唯一存在しうる水源・・・“救いの泉”へ―――
すると、そこには―――・・・〕
ル:(ああ・・・助かった―――水があれば、最低三日はしのげる・・・
それまでに何とかしない―――あら?あそこにいるのは・・・もしかすると先客?)
〔ルリは、=禽=の一人でもあるがゆえに、野にても活きる術を持ち合わせていたようで、
食料がない今でも、水だけで三日はもてるとしていたのです。
すると・・・そこで見かけたのは、全身裸の女性が、首より下を泉に浸しながら、まどろんでいた―――・・・
そんな奇妙な光景を眼にしていたのです。
しかも、どこが具合でも悪いのか・・・その女性は、蒼白い顔色に身体をしていた・・・と、云うのです。〕
ル:あ・・・あの〜〜―――もし・・・もし?
謎:う・・・うぅ〜〜ん―――(むにゅむにゅ〜)
まだぁ〜〜あと・・・五分〜―――・・・
ル:(はい?)あの―――・・・
謎:――――(ぱっちり☆)
ガバ―――・・・
ごっちん〜☆
ル:ふぎっ―――?!
謎:あいっ・・・たた―――なんだよぉ!もおぉ〜・・・人が折角うとうとしてたら・・・
ル:いったあぁ〜・・・(じぃぃ〜ん・・・)
(覗き込もうとしたら、いきなり顔を上げるんだもの・・・痛いったらないんだわぁ〜・・・)
謎:おや?あんた―――・・・
ル:―――えっ?
謎:いっやぁ〜〜ん、はずかしいぃ〜ん!(くねくね〜)
ル:(な・・・なんだぁ? このイタイ人―――)
〔『もしかするともう亡くなっているのかもしれない―――』・・・と、思ったルリは、その謎の美女に呼びかけをしたところ、
よろしく夢の世界へと逝ってましたようで、なんとも寝惚け調子で返す始末・・・
そこで、今一つ調子を見るために覗き見ようとしたところ、急に眼を開けて顔を上げてしまったのです。
すると当然、その謎の美女の頭は、ルリの顔面にクリーンにヒットしてしまい、両者とも悶絶・・・
しかも―――間の悪いことに、ルリを人間だと知ってしまった謎の美女は、
なにやら悩ましいぽぉずでルリに誘惑を仕掛けてきたのです。
しかし、それどころではなかったルリは、謎の美女に今回の事情をよく話したところ―――・・・〕
謎:―――はあ? この先の渓谷にあるお城に案内してほしい・・・だって?
やめときな―――やめときな―――今あんな処へ行ったって、面白くもなんともないよ。
公:そうは云いましても―――・・・妾はそこの“城主”たるお方にお会いして、
どうしてもあるお願いを聞き届けてもらわねばならないのです。
謎:(ピ〜ン☆)(はっはぁ〜ん―――なぁるほど・・・)
・・・それじゃあさ、この私を負ぶってもらおうか―――
公:はい? ・・・それはまた、ナゼに―――
謎:だぁ〜ってぇ〜ん! さっき足挫いちゃったんだもォ〜ん―――!
公:足を挫いた・・・って―――先ほどは、妾の顔とそなたの頭が鉢合わせになったでは―――
謎:ん・もぅっ―――つべこべお云いでないよっ!
厭だったらいいんだよ、せっかくそこまでの近道を教えてあげようと思ったのにぃ〜(つ〜ん)
公:(は・・・なんつ―――わがままっぷり・・・つか、かつての私もこうだったもんなぁ〜)
・・・然様にございまするか―――判りました。
では、負ぶって差し上げましょう―――
謎:・・・ホントに? い・・・いいの―――かい?
公:ええ―――妾なら構いませぬが。
謎:(おやおや・・・云ってみるもんだねぇ〜〜♪)
それじゃ、早速行くとしようか―――♪
〔別に足を挫いたわけでもないのに、そう云っていたのは明らかに甘えを云っている標(しるし)―――
しかもその駄々の捏(こ)ね様は、可愛らしさを通り越して、もはやどことなく憎々しささえ感じてくるのです。
ところが―――なんと、そこでルリは、かつての自分の姿を重ね合わせていた様子・・・
=禽=の一員であり―――婀陀那の役柄をそつなくこなすルリの過去・・・とは。
それはそれとして―――謎の美女が全裸のままではさすがにまづいので、
公主が羽織っているマントを衣服がわりにし、その美女を負ぶさり彼女の指示の下、
件(くだん)の場所―――“お城”・・・ヴァルドノフスク城を目指したのです。〕