<第九十三章; 北伐 >

 

≪一節;驚くべき事実≫

 

 

〔対照的な二人の猛将が、パライソ高官の呼びかけに応じ、パライソ国に参入を表明したのと同時期、

東方の雄『ヴェルノア公国』と、西方の雄『ラージャ国』からも、その将来を有望視された者達の参内が相次いでいたのでした。

 

その中でもとりわけ―――ヴェルノア公国・公主御ン自らが引き連れてきた玖留津(クルツ)某や筮屡拿(ゼルダ)某・・・

ラージャ国のノブシゲ某やチカラ某など、今まで国家の屋台骨を支えてきた者達が挙(こぞ)って―――だったのです。

 

しかも彼らがパライソへ参内する手続きを行ったのも、元・ハイネスブルグの“月”や“花”だったりなど、

彼方も驚くべきところではあったようです。

 

 

ともあれ―――無事、パライソ国の家臣の一員と成り得た者達は、元・ハイネスブルグの“雪”に導かれるがまま、

昨今の対応が急務であるとされている、作戦会議室へと足を向かわせたのです。

 

そして・・・そこには―――〕

 

 

玖:あっっ―――公主様?!

ノ;(なんだと―――?)

チ:(ヴェルノアの公主が・・・すでに最上座を占めているというのは―――?)

 

 

〔いつのまにか―――手続きの煩雑さというどさくさに紛れ、姿を晦ませていた自分たちの主がすでにこの部屋の最上段にいたことに、

驚きの色を表せるヴェルノア公国出身者と―――

初めて見る軍事大国の主―――威風堂々たる姿に眼を奪われ、

またどうして部屋の最上段にすでに陣取っているかの疑問も定まらないでいる者達も、

“雪月花”に促されるようにして、着席をしたのです。〕

 

 

婀:フッ―――・・・皆におかれては、何に対して驚くべきところであるのか・・・妾は解しがたいことではあるのじゃが。

  妾が、パライソ国・大都督である 婀陀那=ナタラージャ=ヴェルノア である。

 

  ついては、そなたたちがこの国に呼び寄せられたことについてなのじゃが―――・・・

  統北将―――

 

イ:(この度の対カルマ戦において、新たに常設された将軍職の一つ―――“統北将軍”

  この職に収まったのはイセリアである。)

  はい―――。

  近年では、大陸の穀倉庫が敵の手に落ち、わが国の官民たちの糧が危ぶまれております。

  ―――が・・・そのことについては、これから戦場となる各地において“屯田”を開くことによって解消できそうです。

  ですから、兵糧のことに関しましては割愛をさせていただきます。

 

  ですが・・・皆様の懸念は、この大陸のどこで戦場が展開されるか・・・なのですが―――

  統東将―――

 

リ:(この度の対カルマ戦において、新たに常設された将軍職の一つ―――“統東将軍”

  この職に収まったのはリリアである。)

  はい―――。

  おそらく敵は、“南”と“東”の二方面から軍事行動を展開するものと思われます。

  そのことは、今回の作戦を担当した中軍師殿と、不肖の私との意見が一致するところでございます。

 

  また、それに伴い―――・・・

 

 

〔作戦会議の部屋の最上座に座する二人―――大都督・婀陀那某に、統北将軍・イセリア某・・・

その二人を挟むようにして将たちが連ね、作戦の交換をしていたのです。

 

しかも、的確に状況を把握しており、この度クーナ地方が陥落したことを、単に危機感を煽るだけではなく、

それでいて対処できうる策を練り上げているのを伝えていたのです。

 

そして、これからカルマがどのようにして世界を掌握していこうとしているのか―――など、

今回の作戦会議に新参入者が加えられたのは、まさにそこを補うためのものだったわけなのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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