≪二節;今昔(こんじゃく)≫
〔―――この人物が、今何かと世間で騒がれているこの国の主・・・
それも あの方 と同じく“王”ではなく“皇”だ―――と・・・?
それに・・・“申し訳ない”―――と・・・?
ヱリヤにとっての あの方 ―――“皇・女禍”は特別な存在・・・
タケル某に見せてもらった親書に落とされていた=申し訳ない=―――の文言に、どれだけ胸を詰まらせたことか・・・
それが・・・会ってみれば―――
無論、ヱリヤには判っていました。
自身の目の前で崩御された人物が、またこの世に生を受けてくることなどありはしない・・・と。
けれども、過分なる期待をしてしまったのも確か―――
その期待が、“夢幻の如く”だと判ったとき、どんなに辛くなるか―――・・・
そのことは、おそらく・・・今回パライソの女皇に同じくして呼ばれた、ヴァルドノフスクの城主だとて同じだろう・・・と、思われたのですが―――〕
エ:あなたが―――この国の君主様だね。
それでは、お近づきのお印(しるし)に―――・・・(ペコリ)
ア:あなたが『双璧』の≪楯≫なる方ですね・・・。
けれども、ここは叩頭(こうとう)をするような場所ではございませんから・・・
あなた方が叩頭をすべきは、諸侯たちの前だけであって、何も平生(へいぜい)からそのようなことをする必要はないのです。
さぁ・・・頭(こうべ)を上げてください―――
〔エルムは―――まるで“ゾハルの主”に見せ付けるかのように、丁寧に頭を垂れ・・・女皇に服する態度をしてみせたのです。
けれど女皇は、今はそんなことはする必要はない――と、云い、またエルムの側まで寄り、自身が膝を屈(かが)めて接したのです。
すると―――深く垂れた頭を、再び上げたエルムが見たものとは・・・〕
エ:あ・・・っ―――同じ・・・
ア:―――はい?
エ:いえ―――今のあなたと、昔私が仕えていた方と・・・同じ―――
お優しい心をお持ちでいらっしゃるのが、判る―――・・・
〔エルムは―――種族の特性からか、他者の眸を覗き込んでの真偽を確かめる術を持ち合わせていました。
―――だからこそ、アヱカが巷・世間で噂となっている あること も、瞬時にしてその真贋を見極めることが出来たのです。〕