≪三節;憤慨の“龍”≫

 

 

〔けれども―――こちらのほうとしてみれば、その光景があまり面白くなく映ったのか・・・〕

 

 

ヱ:はっはっは―――何を血迷っている! 遥けき昔に亡くなられた方が、この世に復活するわけがないだろう!

  多寡が、言動や仕草が同じだからとて、その方はまったくの別人だ!!

  いい加減に眼を覚ませ―――シュターデン!!

 

エ:お前・・・こそ、偉大なるお方を前に、どうして暴言を吐いている―――

  さっさと今までの暴言を訂正しな、今なら・・・この私が取り合ってあげてもいいんだよ―――

 

ヱ:フッ・・・ハハハ―――! ・・・冗談・戯言の類はそこまでにしていただこうか―――

  私は・・・何もお前の三文芝居につき合わされに、ここまで来たのではない!!

 

エ:はっ―――・・・お子ちゃまが、よく吼えたもんだねぇ。

  私とこの方とは今日が初対面、それがナンだって芝居の打ち合わせが出来る・・・だと?

 

  そっちこそふざけるのは大概にしてもらいたいねぇ―――

  さぁ・・・とっとと、『今までのことは私が悪ぅございました』・・・と、頭を下げるんだ。

  そうすれば許してやらないこともない―――

 

ヱ:・・・誰がお前のようなヤツに頭を下げられるか―――

  私だって、プライドというものがある。

 

エ:フン―――お前・・・に、プライドというものがあったのかい。

  だ・・・と、すると―――相当お安いもんだったんだねぇ〜

 

あ〜―――っはっはっは・・・

 

 

〔大勢の観客が固唾を呑み、見守る中―――徐々に両者の口撃は熾烈さを増していきました。

それも・・・片方が罵(ののし)れば―――片方はまだそれに輪をかけて大きくする―――と、云った具合に・・・

 

しかも、両者とも次第に冷静さを欠いてきているのが、端から見ていても判るほどに熱を上げており・・・

ヱリヤは―――すでに焔のような気を纏っているから判ろうものの、エルムのほうでも相手に刺激を受けたらしく、

ヴァンパイア特有の奇怪な形の気を、見えるまでになっていたのです。

 

 

まづい―――このままでは、女皇陛下の御ン前にて、流血の惨事が起こるやもしれない・・・

そのことを危惧した録尚書事・婀陀那は、とりあえず両者を宥(なだ)めようと仲裁に入るのですが・・・〕

 

 

婀:お二方とも―――今は陛下の御前でもあられます。

  ところでいかがでしょう・・・この場は妾が一時お預かりすることにして、お二人を歓待する宴の用意が奥にて整えられておるのですが―――

 

エ:いいだろう―――公主どのがそう云うのであれば・・・

  ―――ん?おや? あんたは・・・

 

婀:ああ―――妾はあちらの方の・・・“影”でございますれば。

 

エ:ふぅ〜〜ん―――ま・・・いいけどさ。

  私にしてみれば、旨いもの食べさせてもらえりゃ〜それで文句は云わないでおくよ―――

 

婀:(ふぅ〜やれやれ・・・)さあ―――あなた様も・・・

 

 

〔録尚書事の呼びかけに応じ、まづ≪楯≫が先に折れた象(かたち)となり、

ひとまづシャクラディア城内にての流血沙汰は回避されたか―――に、見えたのですが・・・

 

それでもまだなお、≪鑓≫は頑なに―――・・・〕

 

 

ヱ:・・・私、は―――参らぬ。

婀:・・・なんですと?

 

ヱ:私は、“参らぬ”―――と、云ったのだ。

  あたら仁君の魂を奉ずる方からの要請だと思ってきてみたらば・・・失望も失望だ―――!

 

タ:ヱリヤ様―――・・・

 

ヱ:黙りたまえ―――! 私一人を頼ってきたものと思えば、啖らうことしか能のないあんなヤツにまで使いを出させていたとは―――!

  私は機嫌を損ねた・・・帰らせて頂く―――!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>>