≪三節;逆巻きの焔≫

 

 

〔それでは――― 一体・・・どう云った理由でこの陣にヱリヤは赴いたのか・・・〕

 

 

ヱ:敵軍の陣中に敵将が乗り込んでくる―――これがどう云うことか判るかな?

 

バ:ナニをおかしなことを―――とうとう気でも触れおったか?

  第一貴様の体たらくを見るがいい、“囚われの将”それ以外の何があるというのだ!

 

ヱ:フフン―――フフフ・・・だろうな、普通一般的な目線で捉えてしまえばそういうことだ。

  だがな、覚えて損はないぞ―――今の私のように、自らの意志で敵の陣中に立つことの意味を・・・

 

―――それこそは・・・

 

  敵将のを獲る・・・それ以外の何があるというのだね―――?

 

バ:ぬ・・・ぬうぅ〜〜―――っ!ふざけおって! 大言壮語を吐くにしても、現に貴様は―――・・・

 

ヱ:鎖で縛られている―――まさか・・・こんなもので私を拘束できている・・・などと、思っているのではあるまいなぁ。

 

バ:な―――なんだと??

 

――〜ドロリ      ジュゥゥ・・・〜――

 

バ:な・・・っ?! 鋼の鎖が―――まるで水飴のように・・・溶けた?!!

  き・・・貴様は――― 一体・・・

 

 

〔ヱリヤがこの陣に来た第一の理由―――それは、捕虜になるために・・・ではなく、敵将の馘を奪いに現れた―――この一語に尽きたのです。

でも、だとすれば・・・そのヱリヤを縛り上げ、この陣に参上したエルムは―――?

 

けれども・・・ヱリヤがまだ云うには―――〕

 

 

ヱ:それよりも・・・シュターデン―――お前というヤツは、あのお方に受けた恩がありながら、今更ながらに敵に寝返るとはなにごとだ!

エ:ひっ―――ひいぃぃっ・・・お、お許しを〜!

 

ゴオォォ〜・・・

 

バ:うおおっ?! な―――なにごとだこれは!?

  まるで・・・焔のような気―――・・・で、出会え〜!ろ、狼藉者ぞ〜〜!!

 

兵:バドラック様―――なにご・・・と

兵:ぅおっ―――?! な、なんだ・・・あれは!

兵:お・お―――おのれ! ここに何をしに来た!

 

 

〔ヱリヤは―――赦さなかった・・・自分たちがここまでに成り上がるまでに、多大なる恩寵をその方から仰いだと云うのに、

それであるにも係わらず、旗色が悪くなったから・・・と、その方を見限った同志に対して・・・

 

そして、その“怒り”の感情は―――ある象(かたち)となって現されたのです・・・

 

そこで―――焔龍は吼えました・・・自らが纏う、焔のような気を逆巻きながら・・・

熱くも―――気高く・・・

その高まりは、やがて一つの火柱となって立ち昇り・・・

 

するとそこには、見慣れない―――しかし、焔よりも紅い 真紅の鎧 を身に纏った女性の騎士が・・・

しかも、この陣中に虜囚となって現れたときのような、 少女 という幼い形(なり)ではなく、

むしろ成熟した大人の女性―――・・・

 

それに“真紅の鎧”というのも、当時の将兵が身に付けていたモノではなく―――

いわば、ここ最近騒がれだしていたある者・・・“蒼龍の騎士”の、近未来的なものを髣髴させるという、あの鎧―――

 

ですが、この“真紅の騎士”には、“蒼龍の騎士”のように 龍 がいないようなのですが―――・・・〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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