≪四節;メア・クルバ≫
ヱ:五月蠅(やかまし)い―――雑魚どもが吼えるな!!
それに私は・・・今、非常に機嫌が悪い―――それも・・・シュターデン!お前の責任だ!!
その死をもってお前の罪を贖(あがな)え―――!!
エ:お―――お前・・・様・・・そうなんだね、私を赦してはくれない・・・
だって―――大恩あるあのお方を、裏切ってしまったのだから・・・
それだけのコトで―――ううん・・・だからこそ、それこそが私の罪・・・
=メア・クルバ=
こ れ わ が 罪 な り
〔殊の外、“真紅の騎士”は機嫌が悪かった―――
それというのも、自身が立てた策略が不成功に終わってしまったのにも、ある意味起因しているからなのでしょうが・・・
なにより、昔日(せきじつ)から同志だと思っていた者の裏切り行為に・・・だったのかもしれません。
だからなのか、何の躊躇すらすることなく―――“ヴァルドノフスクの城主”の身体を、あの真紅の槍で切り刻んだのです。
そして・・・そこには当然としての結末―――
身体を、真紅の槍にて切り刻まれ、夥(おびただ)しいまでの量の血を、そこら中に飛び散らせた“城主”の死体があったのです。
けれども―――彼らは・・・〕
兵:は・・・放てぇ〜〜――――!!
兵:・・・っっああ―――! ウ、ウソ・・・だろ?
兵:矢―――矢が・・・あいつの身体に届く前に・・・
兵:全部燃え尽きちまった―――・・・
兵:そ―――それに・・・見たか? 殺したヤツの血が、あいつの身体には一滴も付着してない・・・
兵:ああ・・・オレたちの身体や鎧には、満遍なく付いているというのに・・・な。
〔今回自分たちに加わる予定のはずだったエルムを、目の前で無惨にも殺された―――
その光景を目の当たりにしたバドラックは、命辛々(いのちからがら)に自分の陣中より逃げ出し、
後に残った配下の魔物兵士たちが、“真紅の騎士”を足止めするべく遠巻きにて矢を放ったのですが、
なんと―――その矢・・・いえ、矢だけではなく、この陣中に須らく飛び散った“城主”の血ですら、
自らが纏う焔で、蒸発・焼失させていたのです。
それに―――“真紅の騎士”も、配下の兵卒程度までには、さして興味を持たなかったのか・・・
ゆっくりと―――しかし着実とした足取りで、先遣隊の隊長であるバドラックを追って、この陣より去ったのです。〕