≪五節;闘争の駆け引き≫
〔そのことに一安堵を覚える先遣隊の兵士たち・・・
―――ところが、突然・・・〕
兵:あ゛・・・ぐぎゃぁああ゛〜〜―――!
兵:お―――おい?! どうした!!
兵:い・・・いきなり死にやがったぞ・・・こいつ!!
兵:し―――しかし・・・なんて死に方だ・・・
兵:ああ―――まるで・・・全身の血が乾涸(ひから)びて・・・
ぎぃやあぁ〜〜!
兵:なに―――?! ま・・・また―――?!!
兵:おい―――あそこでも!!
〔先遣隊の兵士の何人かが・・・まるで全身を巡る総ての血を抜かれたかのような―――
そんな、乾涸(ひから)びた状態で急死をしてしまった・・・
この、恐ろしくも不可思議な現象は、やがてこの陣中のいたるところで見られるようになり―――
生き残っている兵士も、もはや生きた心地がしなかったようです。
すると―――?
此方に流された闇が―――血が―――魔物である彼らに襲い掛かり始め・・・
やがては、 まんまとして この者達全員を謀(たばか)り遂(おお)せた謀略の主が、
その全貌を顕わにし始めたのです。〕
ン・フフフ―――・・・
兵:な―――なんだ? 今の不気味な笑いは・・・
兵:あっ!見ろ―――さっき、“真紅の騎士”に殺されたはずの・・・あの女―――
兵:なんだと―――?そんなばか・・・な――― なんだってあの女が生きて・・・
エ:おぉ〜や―――この私が生きているのがそんなにも不思議かい・・・。
でもね・・・この私は―――ヴァンパイアの=真祖=・・・
心臓を貫かれたり、身体をバラバラにされたくらいじゃ滅びやしないのさ―――
〔今ここで―――不気味にも不敵に笑う存在がいる・・・
それが一体誰のものなのか―――と、思っていたらば・・・その“笑い”の主は、先ほど“真紅の騎士”によって全身を切り刻まれ、
早、絶息した―――はず・・・と、思われたあの女性・・・
ヴァルドノフスク城主
エルム=シュターデン=カーミラ
その者は―――不敵にも嘯(うそぶ)く・・・
自らは・・・ 不死の王 ヴァンパイアであり、またその中でもずば抜けて魔力の高い=真祖=だ・・・と。
そう、その女性はすでに不死の身であり、ヒューマンやゴブリンやオークたちに、どうこうできる存在ではなかったのです。
それゆえに、太刀打ちできないと見るや、一目散に逃げ―――・・・〕
兵:ぃいい―――に、逃げろぉ〜〜! 逃げるんだあぁ〜〜!!
ヤツが追いつく前に―――ヤツに追いつかれる前に〜〜―――!!
エ:ウフフフ・・・ハハハハ―――!
オヤオヤ・・・ナニを勘違いしておいでだい―――
お前たちは、この私の・・・ヴァンパイアの真祖であるこの私の血を、その身に一杯浴びてしまったんだ―――
それを・・・この私の血によって創られた強力な結果意の中で、生き永らえられるとでも思っているのかい―――
兵:―――ぎぃゃああ〜!
兵:ああっ―――ま、また・・・
ち、畜生っ―――!この血さえなけりゃ・・・(ごしごし〜)
・・・っあ、あれ? い―――いくら拭っても消えやしねぇ・・・
エ:当たり前だろう―――私の血は、別名“呪いの血”<カース・ブラッド>とも呼ばれている。
そんなに易々と拭えるものと思っていたのかい!
兵:な―――なんだと?? じ・・・じゃあ―――まさか・・・!
エ:ああ・・・その通りさ―――お前たちは、この私とあの人によって一杯喰わされたのさ・・・
ちょいと、気が付くのが遅かったようだねぇ―――・・・
さぁ・・・もうお時間だ―――仲良く涅槃へと旅立ちな。
この私・・・ヴァンパイアの真祖が操る、魔導式によって―――
裏面;肆拾弐式・ソウル・スティール
〔【ソウル・スティール】;元来『生命』<ライフ>とは、われわれの寿命や生命活動の基盤となるものであり、
それが尽きてしまえば“生きている者”は 死ぬ のです。
でも、それは『主物質界』<マテリアル・プレーン>での話し・・・
この『主物質界』での役目が終わると、その源は『星幽界』<アストラル・プレーン>、さらには『意識界』<イデア・プレーン>へと引きあがっていき、
そこで再構築された後は、また新たに『主物質界』へと降りてくる・・・
その一連の流れを、『生命の再利用』<ライフリング・リサイクル>などと呼んでおり、またの名を『輪廻転生』と呼んでいるのです。
(俗に云う“前世”と云うのは、これの顕著な例)
(本作での女禍様は、つまるところ『星幽界』の住人ということになる。)
そして、この『主物質』『星幽』『意識』の間を往来(いきき)する 生命の源 こそ、『魂』<ソウル>であり、
これを激しく破損したり、損傷―――果ては失ってしまった場合は・・・?
今、エルムが行使した術式こそ、その役目を強制的に終了させてしまう畏るべきモノだったのです。〕