≪二節;凱旋≫

 

 

〔―――ところで・・・『双璧』の二人、ヱリヤとエルムはどうしたのでしょうか・・・〕

 

 

誰:・・・うん? ―――どうしたというのだ、この騒ぎは・・・

将:えっ? ああ、いえ―――実はこの度、ヴェルノアの公主様と同じ名前のある方が、

  “大将軍”に就任した・・・との、そのお祝いのようですが―――はて?あなた様は・・・

 

誰:ほぉう―――大将軍・・・

官:ええ―――これでこの国の屋台骨もしっかりとしてくることでしょう。

  ところで―――あなた様は・・・?

 

誰:ふむ・・・いやなに―――それではこの私からも言祝(ことほ)ぎを述べなければならぬな・・・

 

 

〔とある―――この界隈ではあまり見かけない者が、ふらり〜・・・と、シャクラディアの城内に入ったとき、

そこはすでに、何かの催しをしているかのような・・・そんな華やかさがありました。

 

そこでこの人物が訊ねたとき、ある将軍職に就いている者は、その人物―――・・・

当時をしてあまり見慣れない 真紅の鎧を纏った女性の騎士 の就いている官位より、上の位に就いた者がいることを知り、

少しばかり穏やかならぬものを胸中に感じながらも、“真紅の騎士”は一体どんな人物が自分より高い位に就いたのだろう・・・と、

会ってみてみる気にはなったようです。〕

 

 

茜:―――むっ、何者です・・・そこで止まりなさい。

 

誰:ほぉう―――貴君らが女皇陛下の部屋の前を固める近衛の将か・・・中々に、良い訓練を受けているようだ。

  栓無きことだ、これから私は女皇陛下に御用があって、中に入らせてもらう。

 

葵:・・・陛下は何かとお忙しい身―――事前に会うお約束は取り付けておられるのですか。

 

誰:ははは―――好し好し、そのくらいにしておきたまえ。

 

茜:―――怪しいやつ・・・ならぬ!お前が何者であろうとも、ここは通しはしない!

誰:―――・・・。

葵:・・・ご理解いただけたなら、後日改めて出直されるがよろしかろう―――

 

 

〔女皇の私室の出入り口の両脇を固める二人・・・以前、ヴェルノアの公主より連れてこられ、以来女皇の近衛将としている二人。

葵と茜―――その二人は今日(こんにち)でも、女皇の私室に侍立をしていたのです。

 

でも・・・その二人でさえも、突如として来訪をしてきた“真紅の騎士”には驚きを隠すコトは出来なかったようです。

 

 

見慣れない鎧―――自分たちよりも鍛え抜かれた身体・・・相手を射抜くような鋭い眼光・・・

この人物は相当に名のある者に相違はない―――しかし、自分たちヴェルノアの国や、近隣のハイネスブルグの国にも、

こういった武名を馳せる者を知らない―――・・・

 

かと云って、西方であるラージャの国の武将ともまた違っている。

それというのも、あの国には女性の武将がいるとは聞いた例もないし、その国の近隣であるサライ国では、

“非戦論”が主観としてあるから、軍隊自体の存在を認めない―――・・・

 

・・・だとしたら、一体どこの国の出身者なのだろう―――

 

つまるところ、現在自分たちが知っている国家に、存在自体が認められないながらも、自分たちをも凌ぐ 武力(ぶりき) を持ち合わせている者に、

興味を示すのですが―――・・・その人物自体の出自が判らないままでは、容易として罷(まか)り通るを許さなかったのです。

 

そこで―――思わぬ壁に当たってしまった“真紅の騎士”は・・・〕

 

 

紅:ふむ・・・これは困ったものだな―――あたらかわいい部下を、どうにかしてまでこの扉をくぐる道理も、また、ない―――・・・

  これがコキュートスの・・・あの男に通ずる扉の前だったのならば、私は喜んで邪魔立てする者を排除したものを・・・

 

茜:な・・・にっ―――?!

葵:待って茜―――今・・・コキュートスと? カルマの魔都をなぜに知っている。

 

紅:知っている―――よく、知っているよ・・・フロイライン。

  あそこがどんなところで―――誰を斃すかなど・・・この私が、一番良く心得ていることだ。

 

 

〔しかし―――逆に“真紅の騎士”は、嬉しくもありました。

本来ならば、初顔合わせとなるはずの歓待の宴の前にシャクラディア城より去り、

だからこそ未だこの国の将官には馴染みはなくとも、頑として職務に忠実なままに女皇へ通ずる扉を堅守する二人の近衛将に、

ついぞ讃えたくもなってくるのですが―――

こうも押し問答では如何ともしがたく、そろそろ自分が何者であるかを述べようか・・・と、した矢先に―――

 

――葵、茜・・・もうその辺で通して上げなさい――

 

女皇の部屋より、許可の号令が下ると―――それまでの抵抗がウソのように、

二人の狛犬は“真紅の騎士”を女皇の部屋へと通してあげたのでした・・・。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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