≪二節;闇の揺らぎ≫

 

 

〔一方そのころ―――現在のところは、パライソの当面においての“仮想敵国”であるカルマで・・・

先般の先遣隊の結果報告を耳にする魔将たちは・・・〕

 

 

ア:なんだと―――?! 先遣隊が何者かによって壊滅させられたというのか!?

フ:それに・・・面白からぬことに、そのパライソとかいう国の最前線では、兵たちの食料となるものを育成させているそうだ。

べ:小癪な―――クーナを占(と)られてあきらめるかと思えば・・・

ビ:―――いかがいたしましょう、大王閣下。

 

サ:ふっ―――気にすることはない・・・すでに件のことは 黒き丞相 に一任させてある。

 

ア:―――なんですと!? おのれジィルガ!われらに先んじて抜け駆けをしおったのか!!

ジ:フフフ―――これは聞き捨てならぬことを・・・

  彼の者達が食料の要ともなる処を占(と)られて、何もせずにおかれましょうか。

 

  まづ第一に―――いかなる犠牲を払ってでも、再び彼の国を奪取すること・・・

  第二に―――自らが田畑を養い、戦地においての兵糧を確保すること・・・

  この二つの事項を念頭に、戦を始めるということは近代においての常識とも思われますが・・・

  それを―――まさかあなた方が知らぬはずはありますまい?

 

ア:なっ―――・・・! お・・・おのれぇえ〜! われらを愚鈍なる将と罵りおるか!

  そこになおれ! これからの戦の前祝に、貴様から屠ってくれるわ!!

 

 

〔何者かによって先遣隊が壊滅させられてしまった―――・・・

この一報は、先遣隊が未だに前線に到達してこないことから、前線基地の砦より赴いた伝令が、

全滅していた先遣隊を発見―――それにより発覚した事態でもあったのです。

 

しかしがら―――このことは由々しき事態・・・

 

今や軍事においては、ヴェルノア公国を凌ぐ戦力を保有するカルマにおいては、それは好ましからざる一報だったのです。

 

世界最凶の軍隊―――その軍隊が、行軍の途中で・・・しかも何者とも判らぬ者によって壊滅させられたとあっては、

これほど不愉快で、且つ沽券にかかわることはなかったのです。

 

しかも―――“食”が細くなって泣きついてくることを見越した上で、国の版図の一部に加えた『農業大国』・・・

ところが泣きついてくるどころか、まるであてつけるかのように前線で田畑を拓いているとは・・・

その想定外の行動に、魔皇・サウロンの意見を聞こうとすると、彼方からはすでに策を講じた―――との一言が・・・

 

けれども、それがよりによって、最近になった取り立てられた“新参者”である 黒き丞相 の構想によって・・・とは、

それに―――またもその者からは、あたかも自分たちを嘲(あざけ)るような態度が・・・

そのことに憤りを感じたアラケスは、自身の得物である≪魔槍・ベルクラント≫を手にとり―――・・・〕

 

 

ビ:―――まあ待ちたまえ・・・そのような些細なことで、身内が争ってどうする。

  この中で一番に得をするのが誰なのか・・・誰もおりはすまい。

  ただ、喜ぶのは相手のパライソなのだぞ。

ア:だが・・・しかし―――!!

 

ビ:ジィルガ―――あなたも不適当な発言は差し控えていただきたい・・・

  今のような仕様では、内部崩壊を目論む者―――と、捉えられても致し方ありませんぞ。

ジ:いえ・・・私のほうでも、つい戯れを申しましたようで―――

  この場で重ねてお詫びを申し上げる次第でございます。

 

 

〔すると此方からは、まるで舌打ちをするかのような音が聞こえ、もう少しで血の海となるところだったこの場所は、

魔将の筆頭の説得によって、何とか収拾されたのです。

 

これを見てのように、今まで磐石の一枚岩のような固い結束を誇っていた魔将たちの間にも、少なからずのヒビは確認されたようで、

それもこの度、新たに参入した者の実力も知っていただけに、誰しもがそうであるとも見えなくもなかった・・・

ただ―――その者達に翻弄されるがままの者達がそこにいたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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