≪三節;交渉≫
しかし―――それこそは・・・総てが≪縁≫のなせる業だったのです・・・。〕
ブ:―――お待たせをいたしました。
私が当城の持ち主である、 ブリジット=サー・アルフォンヌ=ランカスター と、申す者です。
女:初めまして―――私は 女禍=ユーピテル=アルダーナリシュヴァアラ です。
早々にお会いできて光栄です。
ブ:いえ、こちらこそ・・・そちらのお嬢様は。
女:ああ―――この子は スターシア=ラゼッタ=アトーカシャ です。
ラ:初めまして―――・・・(ペコリ)
ブ:・・・お名前が違うが、もしかすると連れ子さんなんですか?
ラ:フフッ―――初対面なのに・・・いきなりズバッと云う人ね。
女:これ―――ラゼッタ・・・
ブ:気に―――障られたようであれば、申し訳ありません。
これが性分なモノでして・・・
ラ:(クス・・・)いえ、気にはしていませんわ。
ただ―――私はあなたのようにストレートな物言いをする方は、嫌いではありませんから。
女:・・・申し訳ありません―――口の利き方を知らなくて・・・
ブ:・・・いえ、こちらも気にはしておりません。
さて、早速ですが―――交渉の方に入るといたしましよう。
そちらとしてはおいくらでご購入を希望されているので?
女:そちらの言い値で構いません―――
ブ:・・・そうですか、でしたら相場どおり10億でいかがでしょう。
〔まづ―――定石通りに、自分たちの自己紹介から入る彼女達。
そこで、貴重な情報が入手できたのです。
その・・・“謎の女性客”こそ、女禍であり・・・今回も女禍のお供として、一緒に来ていたのはラゼッタだったのです。
そこでお互いの名前が知れ渡り、次にはこの城の値段の交渉に入ったときに、
ようやくにしてブリジットは、この連中が“只者”ではないことに気付き始めたのです・・・。
それというのも、『相場』とは云いながらも、明らかに“高値”である数字に、なんと女禍は―――・・・〕
女:・・・それはあなたの本心からではないでしよう。
ブ:私の―――本心・・・? ですが、このクラスの城の値打ちとしてはこの辺が相場ですので・・・。
女:(ふぅ・・・)私の眼は―――節穴ではありません。
これだけの好条件を兼ね備えておきながらたった10億とは・・・私ならその五倍を出しても惜しいとは思わない。
ブ:(五倍・・・)――――50億?!!
女:・・・そうです―――
〔彼女―――ブリジット所有のトロイメア城は、ヨーロッパ各地に点在している名城よりかは、規模的にも小さいものでした。
ですが―――その景観・・・街を見下ろせる小高い丘の上に建ち、その背後や両脇を杜が固め・・・
いわゆる、自然の中に聳え立っていたのです。
そこを、買い手である女禍は賞賛を極め、五倍もの数値に吊り上げたのですが・・・
ブリジットにしてみれば、そこまでしてこの城にこだわるそのわけを、訊こうとしたのです。〕
ブ:なぜ―――・・・ナゼ、この小さな城に、そこまでの破格のお値段を?!
女:それは―――この私が気に入ってしまったから・・・。
それではだめだろうか―――
ブ:だ―――ダメも何も・・・私も英国貴族の端くれだから判るが。
たったそれしきの理由で五倍も値を上げる・・・だ、なんて―――
あ、あなたこそその本心は―――
女:・・・ダメです、ここでそれ以上の事は明かせません。(ス・・・ッ)
(ツカツカ――)もし―――・・・これから私の成そうとする事に、深く足を踏み入れようとするのなら、
50億もの値をしても安値だ・・・つまり―――私が故意に値を吊り上げたのは・・・
ブ:・・・この城の持ち主である私ですら、あなたの持つ『秘密』には立ち寄りべからざる―――と・・・?
女:そういうことです。
それに・・あなたは、下の街で見てしまったのでしょう―――・・・。
ブ:・・・やはり―――あれは“幻”などではなかったのか!!
ならば、あれは―――あれは一体・・・??!
女:私は―――この城を買いに来た“客”で、あなたはその“持ち主”・・・。
それ以上も・・・以下の関係でもない・・・少なくとも現在は―――ね・・・
悪いと思ったことは、早く忘れたほうがいい・・・。
〔ブリジットは―――学者などではありませんでした・・・が、そこはやはり『なぜ?』からしか入るしかなかったでしよう。
あまりに、急激に起こってしまった不可解な現象、それを目の当たりにしても、当事者の一人である女禍より、
『それより先は立ち入らない方が無難』だとクギを差されてしまった―――・・・。
しかも―――米で起こってしまった事象の調査・解明をしている“会”の一人であるブリジットの、
それも持ち城で、その城の定価の五倍もの高値で購入し、またそこで何かを成そうとしている不思議な客・・・
これを『縁』といわずしてなんでありましょうか――――〕