<第十一章;スプートニク>
≪一節;故郷からの訃報≫
〔なんとも―――偶然なことに一致したこと。
かの、滅んでしまった傲岸不遜なる超大国 米 を、
一瞬の下に 2億5千万年 の荒野にしてしまった =J= なる存在と、
そのことの原因究明と今後の世界の展開を定めるべく、極秘に開かれた『第二ヤルタ会談』。
その・・・会の一員である英国代表のブリジットの顧客『女禍』・・・
そのことを一致させるには到底無理のように思われ、その場では見送られる象となったのですが・・・
確かに、今―――そのことを疑問に抱きながらも、英国領事館で休息をとるブリジットは・・・〕
ブ:(“女禍”=“J”か・・・)似た名前も・・・あるもんだな―――
(しかし、今までに数回接触した私なら分かる、この存在は“同一”だ。)
今度会った時に・・・その事を訊いてみなければならない―――か・・・
〔数回―――たった二・三度会っただけなのに、不思議とブリジットは 女禍 と J とが、
同じ存在であるという事に、薄っすらと感付き始めていたのです。
しかも―――50億もの大金が、取り引きをしたすぐ翌日に、自分の口座に振り込まれていた・・・
そして、振替先の口座名義も『J』と・・・・
だから―――次に会う機会には、彼女にそのことを聞いてみようと思っていたのですが―――・・・
このとき、急に本国よりある一報が――――〕
セ:お嬢様!大変です、お父上が・・・!!
ブ:―――なに?!お父上が?? 一体どうしたというのだ!!
セ:そ・・・それが、実は―――
〔ブリジットが休息するためにベッドに横たわっていたところへ、息せき切って入室してくる執事のセバスチャンが・・・
それも、本国である英国に残してある実父に、或る災いが降りかかったというものだったのです。
その―――実父が見舞われた或る災いとは・・・〕
ブ:あ・・・IRA?!! く・・・お、おのれぇえ〜!私がいない間に年老いた父上に狙いを定めるとは―――!!
セバスチャン!直ちに帰国の手配を――――・・・
〔『IRA』―――アイルランド共和国軍、北アイルランドを英国から奪還しようとする反英地下組織。
一応『軍』の名称がついてはいるが、その実体は過激なテロ組織。
しかも・・・ブリジットも―――彼女の実父も、この組織の排除をすべき活動をしていた時期もあり・・・
そう、つまるところ、この組織の目の敵にされていたのは事実―――
だから当家の現当主のブリジットがいないスキに、年老い・・・また余命をガーデニングなどに費やしていた、
彼女の実父に的を絞っていたというのも、強ち標的を違えてはいなかったのです。〕