<第十四章;復讐の美獣>
≪一節;滅んだ国の生き残り≫
〔さて―――ここでいくつか話を戻すとして・・・
読者諸兄は覚えておいでであろうか、そう、このお話し<SAGA編>の初段階ともいえる、
あの不遜に過ぎた大統領補佐官と、彼の所為で滅ぶ事になってしまったあの大国のことを・・・
いわば、ブリジットはその原因の究明と、何者の手によってなされたかの解析を行うべくの『会』に所属していたわけであり、
その彼女と、件の事象を引き起こしてしまった者とが友誼を結ぶなど、これまた不思議な“縁”と云わざるを得なくもないわけであり・・・
それとまた、かの滅んだ大国・・・<アメリカ合衆国>―――その国民も、その総てが本国にいたわけではなく、
詰まるところの、在外に駐在していた大使やそういった関係者が、今回のお話のキーパーソンとなってくるのです。
今―――ある組織のパリ支部に、自分たちの国がどうして・・・何者によって滅ぼされたか―――の解明を、
その組織独自の展開でなそうとしているようです。〕
誰:―――皆集まってくれたか・・・
私が諸君らを呼び寄せた、インテリジェンス・エージェンシーのパリ支部で特務班主任を勤めていた、
カレン=ヴェスティアリ・・・コードネームは<ニルヴァーナ>だ。
カ:(カレン=ヘカテ=ヴェスティアリ;27歳;女;<本篇>から読んで頂いている読者には、もうお気付きになられたことだろう。
そう・・・彼女こそが、ゼシカのルーツなのである。
この当時はCIAの要員として、各国を股にかける活躍をしていた。)
・・・ところで―――先立って私が依頼していた、われらが母国を滅ぼしてくれた不逞の輩の所在は突き止めたか?
部:いえ・・・それがてんで雲をつかむような有様でして―――
聞くところによると、ペンタゴンにあったミサイルの集中制御が突然利かなくなり、
誤作動を起こして発射されたのがそもの原因ではないか・・・と。
カ:―――そうか・・・だが、母国が保有していた一部のミサイルが、友国に飛んでいかなかったのは不幸中の幸いだったな・・・
部:あ―――あとそれと、ヤルタでその原因の究明を行うべくの会が開かれているとの、情報をキャッチしましたが・・・
カ:なに?あの地で―――?
ふぅむ・・・・(なるべくなら他人の手は借りたくないが・・・今は状況が状況だけに、手段を選んでいる余裕はないか―――・・・)
〔そこに集まった有志を集めたのは、かの国の情報機関でもかなりの腕利きであったカレンと云う名の女性でした。
そこでカレンがまづしたこととは、的確かつ迅速な情報収集・・・
どこの不逞の輩が、何の目的で自分の愛する母国を滅ぼしたのか・・・
また、あの忌まわしき9・11の再来なのでは―――との憶測も一時はあったのですが、
中には、国防総省のミサイル集中制御装置が突如利かなくなり、
挙句の果てに自国の都市や施設などに核の雨を降らせたとの風評すらも出てきたのです。
この根も葉もない、デマにも等しい情報には、さすがのカレンも苦笑するしかなかったようですが・・・
ある情報で、ブリジットも所属する<ヤルタ第二会談>の事を聞きつけ、
今は何をおいても、的確なモノを欲しがったカレンにとっては唯一の朗報となりえ、
早速その会合へ向けての手続きを踏んだのです。〕
カ:よし―――どうやらご当地フランスに、あの会の一人がいる様だな・・・
名は・・・ギュスターブ―――か、では早急にアポイントメントを取ってくれ。