≪二節;ギクシャクした関係≫
〔カレンは―――自尊心から、他からの力は借りたくはありませんでした。
けれども、CIAの本部があった米国・ラングレーも壊滅した今となっては、
必要最低限のモノを習得することですら難しい有様・・・だから、ここは百歩譲ってでも他からの協力を得ようとしていたのです。
そこで―――カレンが目をつけたのは、自分と同じ目的で事象の解明を行おうとしているあの会・・・
そう、<ヤルタ第二会談>の事だったのです。
そして、今現在彼女たちの潜伏している場所はフランス―――・・・
丁度良い事に、この国には件の会の者が一人いることを知り、早急にアポイントメントを取ったのです。〕
カ:はじめまして、ムッシュ―――
ギ:ギュスターブ・・・と、そうお呼び下さい。
カ:ありがとう、ムッシュー・ギュスターブ。
ギ:・・・それで、亡国の女勇者が私に何の用だろう―――
カ:単刀直入に申し上げましょう―――
確かあなた方は、滅亡してしまったわれらの国の事を調べ上げ、=J=なる存在の事まで特定しようとしている。
願わくば、その成果―――我らのほうにも回してもらえないものか・・・と、思いまして。
ギ:・・・なるほど―――つまりあなたは、大勢の同胞の仇を討たんと・・・
ふむ、その情熱は判らないでもありませんが―――・・・
カ:・・・叶わない―――と?
ギ:いえ、我々のほうでも情報の収集をしてはいるのですが・・・
いかんにせよ、そういったノウハウや資料が実に乏しくありまして―――
カ:・・・・。
(―――ここにきて、早くも行き詰まりか・・・)
ギ:―――まあ、そう落胆せずとも、我らの会にはかつてあなた方とも諜報の覇を競い合った、
ロシアのトロツキー殿もいることですから・・・
それに、あなたがこの会に加わってくれれば、今までの倍の速さで相手を特定できるのでは・・・?
カ:・・・馴れ合いはしたくはない―――けれども、そういっている余裕すらないのも確か・・・
―――判ったわ、これからは我らも協力をするから、今の時点まで分かっていることを教えて貰えないものだろうか。
〔そこで彼らは、未だに不特定である=J=へのアプローチを開始するために、
共闘の道を歩むことを誓約したのです。
そして、次の会合の席では、ギュスターブにより招かれたカレンの姿が―――・・・〕
ギ:こちらは―――もう皆さんもご存知の通り、欧州で活躍している≪ニルヴァーナ≫こと、カレン=ヴェスティアリだ。
もはや紹介する必要などないとは思うが―――・・・
ト:・・・よくもおめおめと顔を出せたものだな―――
カ:・・・あら―――これはお久しぶり、≪イーニー≫のトロツキー。
お互い辛酸を嘗めたり嘗めさせたり―――の仲ですものね。
ル:しかし〜〜まあ―――よく見てみるとなんとも豪勢な顔ぶれだな。
サ:フフ・・・それはそうでしょう―――ここには世界のあらゆる情報に精通している者が集うところですから。
ブ:フ―――だが・・・たった一つの存在も確定できぬようでは、その表現は妥当とは思われませんなぁ、サウザー。
サ:うむっ―――ぐうぅ・・・
ル:おい――― 一言多いぞ、ブリジット。
ブ:気に障られたのであれば、素直に謝りましょう・・・
だ・が、=J=なる者が一体何者であるのか・・・それが分からないのもまた事実―――
カ:(“鉄の女”―――)・・・では、これは何のための集まりなのだ?
ただ、雁首をそろえているだけの集まりか―――?
〔けれども・・・その場所には、一致協力をしながらも数多くのトゲが存在だにしていました。
それもそのはず―――そこにいる者は、互いを利用し、利用され―――の関係だったのですから・・・
中でも、米と露の“冷戦”は最たるもので、その場で顔を見合わせた各代表の感情の違いを見ても、それは分かった事でしょう。〕