≪四節;全ては“盟友”のために・・・≫
〔そして、今回あったことを伝えるために、ルーマニアにある“元”自分所有の城・・・
トロイメア城へと立ち寄ったブリジットは―――・・・〕
女:えっ?! 近々ここで厄介になる?
ブ:ええ―――・・・
実は、私の所属している会に、以前あなたが滅ぼした国の者が参りまして・・・
女:あの国―――・・・
ブ:はい・・・。
これであなたを包囲せんとする輪が、又一つ狭められた・・・と、思ったのですが、
ついていた事に、あなたを探索する任―――それを私が受け持つ事になりまして・・・
女:そうか・・・君が―――
ブ:ですが、ご安心を。
あなたのような素晴らしい顧客を売るほど、私は落ちぶれていない。
それに、あの会も少々退屈に感じてきましてね。
女:そんな、勿体のない・・・。
ブ:―――そうでしょうか?
私にしてみれば、あんな連中と付き合っていくよりか、あなた方と付き合っていくほうが格段に面白い。
女:だけど・・・そんなことをしてしまうと、君はあの会にはいられなく―――
あっ!そういうことか―――
〔ブリジットは、大事な上客を売るつもりなど、最初(はな)から念頭には入れていませんでした。
それに、女禍に云っていた事も、ここ最近で物事のあり方を大きく捉える事ができるようになったから・・・
自分たちが―――今までいかに小さい料簡でしか物事を捉えられていなかったか・・・
もし、この女性に会わないでいたら、自分はいつまでも広い世界を知ることが出来なかった・・・
だから、女禍のことを知る自分が、あえて彼女を探索する事を請け負い、
その間だけは、自分の上客の・・・・いや、“盟友”の心休まる時間を作ろう―――という、
そこはブリジットなりに考えた感謝の象(かたち)だったのです。
それに、ブリジットにしてみれば、早、興味の対象外ともなった<ヤルタ第二会談>を脱退する事は、
すでに計画の一部ともなりえていたようです。
そして―――概(おおむ)ねの事を伝えておいたブリジットは、お城から去った・・・のですが―――
彼女が車で出て行くところを、CIAの要員に見られていたのです。
そのことを、彼らを束ねるカレンに報告したところ―――・・・〕
カ:ナニ―――? 隣国の城から“鉄の女”が出て行くのを見ただと?
(ふうむ・・・)・・・よし―――至急その城の事を洗え。
〔小貴族が、別荘代わりの城を訪ねることは、そう珍しくはありませんでした。
ですが―――このときカレンの・・・諜報屋としての彼女の“勘”というべきものが鋭く働き、
本当にブリジットが、そういった目的のためにその城を訪れたのか・・・
そのことを調べていったところ―――〕
カ:―――なんだと、あの城は元々“鉄の女”・・・ブリジットの所有物だったのが、
競売にかけられて何者かの手に渡り、今は別人が所有しているというのか?
・・・・では、今の名義人は―――
部:それが、面白いことに『シャンバラ商会』の女禍という女性でして・・・
カ:ナニ? 『シャンバラ商会』<Jhamvhallar>の女禍<Joka>だと?
ふぅむ・・・どちらの頭文字にも=J=か―――
・・・他には―――
部:残念ですが、データーベース上で検索した結果がこれだけなのですが・・・
カ:・・・早、行き詰まりか―――
・・・・・・・では、“鉄の女”のほうへアプローチを変えてみるか・・・
〔そこで突き止めることが出来たのは、元々ブリジット所有だった城が、
今では別人名義の所有となっている事だけ―――
ですが、そこにはそれなりの成果が。
そう、遠からずとも女禍が現在の所有者だという事が分かってきたのです。
けれどもそこから先が、手がかりが途絶えてしまい、又も足踏みをしなければならなくなったか―――に思えたのですが・・・
そこでカレンは、視点を切り替えて、今度はブリジットに調査の対象を絞ったのです。〕