<第十五章;シャクラディア>
≪一節;準備段階≫
〔以前――― 一瞬のうちにして滅びてしまった超大国・・・
その残党である海外組の一人、カレン=ヘカテ=ヴェスティアリが、
自分たちの故国を滅ぼした、憎き相手への手がかりを掴もうとしていた頃。
その一方の、ルーマニアにあるブリジットの元・別荘―――トロイメア城においては、
ある作業の準備段階に追われていたのです。〕
ブ:あの・・・これから何があるというのです―――?
女:うん? うん―――総ての準備が整ったのでね・・・
ここでの作業も、次のステップへと移行しようと思っているんだ。
ブ:“作業”の、“次のステップ”??
ラ:ウフフ―――いままでは私たちだけでしたけれど、これからここは大所帯になりますわよ〜〜?
ブ:ラゼッタ―――それはどういう意味・・・
ラ:ウフフフ・・・・それはそうと―――第一次には誰と誰が来るんでしたっけ。
女:確か・・・ハミルトン副官と、技術主任に―――それとあと、整備担当の者が数名・・・
それに、ブリッジのオペレーターも数名回してこようと思うんだ。
ラ:やはり――― 一度というわけには参りませんか・・・。
女:そうだね―――本艦とのシンクロ率の微調整だとか、補修や維持などにも人員を割かなくては・・・
ラ:―――でも、ハミルトンさんが来てくれるのは助かります。
クルーの皆さん方も、女禍さんの次に信頼を置いていることですし・・・
女:あっははは―――彼はきちっとした人だからね。
行き当たりばったりの私よりかは、いくらか安心できるだろう。
〔その日は―――これからなにやらの一大イベントがあるらしく、
いつもはゆったりとしているブリジットの顧客も、忙しそうに城内を駆け回っていました。
そんな彼女が一息ついたとき、これから何が始まろうとしているのかを聞いたのですが・・・
あえて女禍はそれに返答(こた)える事はせず―――
しかし、女禍にくっついているラゼッタの口からは概(おおむ)ねの事・・・
――これからここが大所帯となる――
そのことにブリジットは、またも疑問を投げかけたのです。
すると―――もれなく彼女たちの口からは、おそらく・・・一次派遣されるクルーたちの名が・・・
その中には、何かしらの整備を行う者と、その責任者たる『技術主任』、
そして・・・あのラゼッタが絶賛してやまない、ハミルトンという名の副官・・・
それらの事を聞くにいたり、ブリジットもようやくにして諭ったのです。〕