<第十六章;“黒衣の未亡人”>

 

≪一節;ある存在≫

 

 

〔宇宙暦―――98,650年(西暦20XX年)当時、

宇宙で最強最悪の称号を慾しい侭にしていた、ある集団がいました・・・。

 

“略奪”“殺戮”“強姦”等・・・悪逆非道の限りを尽くし、その悪辣非虐に関しては、

同業者である宇宙海賊<ステラバスター>たちでも近づかなかったと云います。

 

そして―――ここで面白い事実が一つ・・・

その“集団”の構成員たちは、皆屈強な男たち・・・しかも、その者達は、他惑星の出身者たちで占められており、

云わば、ゲリラ的な性格が強かったのですが・・・

 

その屈強な男たちを従えるのは・・・なんと―――

=女性=

 

雪白色の肌―――

紫色の長髪―――

真紅の眸―――

薄桃色の口唇―――・・・

 

そして・・・好き好んで“黒衣”を身に纏っている・・・

 

―――と云う、地球式で表現するのならば、大人の色香漂う 女性 ・・・・

 

その“彼女”の美貌を讃えたのか―――宇宙の警察機構がつけた、彼女が率いるこの集団の総称・・・

 

=ブラック・ウィドウ=

黒衣の未亡人

 

その―――彼らが・・・今、期せずして太陽系の第三惑星『地球』に近接しようとしていたのです。

 

そのことをキャッチした、≪ゼニス≫では―――〕

 

 

乗:艦長―――報告です。

艦:・・・なんだい―――

 

乗:はい―――ただいま100フェイト先の航路で、

  識別コード<イオ737・シギル565・オガム120713>を認識した・・・とのことです。

  いかがいたしましょう・・・

 

艦:・・・・そうかい、判った――――下がっていいよ。

 

 

〔突然な≪ゼニス≫にいる乗組員からの報告・・・

 

この宙域に、何者かが来ようとしていることを、

≪ゼニス≫艦長・ガラティアは、その識別コードのみで瞬時に判断をしました。

 

ですが、ガラティアは・・・すぐに結論付けるような事はせず、

その情報のみを得ると、すぐに回線をシャットアウトしてしまったのです。

 

そして・・・誰もいない場所にて、こう嘯(うそぶ)くには―――〕

 

 

ガ:フフフ―――・・・これはまた、とんでもないヤツらに目をつけられたものだねぇ。

  けれど、私は手助けをしてあげられない、お前たちだけで解決してごらん。

  こういう試練を乗り越えて、成長とはするもんさ―――・・・

 

  でも、まあ―――何も知らないまま・・・ッつうのもなんだから、デルフィーネのヤツだけでも知らせといてあげよか。

 

 

〔本来、ステラバスターというモノの性格は、無作為・無差別に星間を荒らしまわる連中のことを指すのですが・・・

この集団―――≪ブラック・ウィドウ≫が彼らと違わせていたのは、

一つの標的を見定めると計画的・・・

いや、その“計画的”というのも言葉の表現上だけでは生易しかったのです。

 

それというのも―――ウィドウたちは、最初は何であれ“善人”の皮を被って標的に近づき・・・

然る後にその本性を露わにし、総てを啖い尽くす―――

しかも、標的が気付くのも、その本性が露わになったあとなので、遅きに失したわけであり、

また、途中で気付かれても、一斉に標的に群がり・・・骨の髄までしゃぶりつくされるのが常だったのです。

 

 

その彼らが―――・・・今回はこの地球に的を絞っていた・・・・

 

けれど、ガラティアは、自分の妹たちが、次の段階に進んでもいい頃合いだとも思い、

あえて女禍には知らせず、次姉であるジィルガには知らせておいたのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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