≪五節;ソーリアム≫
〔そしてその時は、遠からずもやってきたのです―――
今・・・高級外車が、シャンバラ商会事業所ともなっている トロイメア城 正門前に横付けされ、
そこにはあのビューネイなる者と、一人の女性―――・・・
菫色の長髪―――
―――真紅の眸
雪白色の肌―――
―――薄桃色の唇
そして・・・雇っている者と、同様にして感じる、危険な色香―――・・・〕
ブ:・・・また来られたのですか―――
ビ:云ったはず―――だと思うのですが・・・
私はまだ諦めたわけではない・・・と。
それに、今日は私の雇い主も同伴しておりますので・・・
ブ:ぅん―――女・・・?
オ:初めまして・・・わたくしめは“ソーリアム”の代表である サロメ=オスカー と、申す者でございます。
先般、この者を遣わしまして、あなた方の事業の手助けをしたい・・・と、申し出ていたのですが―――
この者の申すには、あなた方はわたくしの出所を疑っておられる・・・とか。
ブ:―――ええ・・・当方といたしましては、顧客と契約を結ぶ際、あらゆるネットワークで検索をし、
その会社・・・並びに事業所が、名目上―――か、あるいは架空名義で設立されているモノではないか・・・
というところからはじめます。
ですが・・・あなた方の会社名、どこの検索サイトにもかからなかった―――
それが架空名義であるか・・・すらも。
つまり、あなた方は アンノウン ―――総てが不明・・・
設立された経緯から、出資金―――会社の規模、そのどれをとってしても・・・
オ:おほほほ―――
ブ:なぜお笑いになる―――
ビ:いえ、これは大変失礼を致しました。
我が主がお笑いになられたのも、それなりの理由というものがあるのです。
なぜかと申しますと、私達の会社はほんの一ヶ月前に立ち上げられたばかりなのでして・・・
ネットワーク上に顔を出そうにも、生憎とそういった担当の者とかがおらず、何かと不自由をしましたが・・・
この今朝方になって、ようやく出しても恥ずかしくないものを構築できまして―――
・・・これが私達のアドレスになります、ぜひとも今アクセスしてみてください。
私達の・・・高い理念と、これから何をなそうとしているのか――が、一目で判りますから。
ブ:・・・―――<カタカタカタ・・・>―――
(こ・・・これは―――?!)
〔至極丁寧な言葉遣い・・・柔らかい物腰・・・そして、その美麗な容姿に、
ゴク普通の一般人だったら、疑う余地すらなかった事でしょう。
しかし、ブリジットは違いました、いかにその時に物腰柔らかであったとしても、
どこか油断のならない感じがしてならなかった・・・
それは、ビューネイ某から、彼らの持つサイトを閲覧するよう勧められ、そこを見たとしても・・・
そのサイトの造り込み―――“自然と共和を”・・・を、謳い文句にしているにも拘らず、
ブリジットはなぜか妙な違和感を抱いたのです。
彼らの社名―――“ソーリアム”・・・
それが、原子力を再生成するときに必要とされるものの一つ―――
“自然と共和”ではないことに薄々ながら気づいたから・・・。〕