≪三節;狭められる包囲網≫
ル:―――いや、だがしかし・・・ありえん話ではないぞ。
事実、あのカレン率いる米の残存勢力が、いまや雲隠れの状態だ・・・。
ト:そういえば―――あの女勇者が、最後に行方を晦ませたのは・・・
ブリジット、確か君が、代表理事を務めているという・・・なんと云う会社だったかね。
ギ:『シャンバラ商会』―――“桃源郷”・・・ですか。
中々センスの良いネーミングだが、そこでは主になにを扱っているので。
ブ:・・・何、大したものではありません。
単なる 慈善事業(ボランティア) 団体だと思っていただければ、それでかまいませんよ。
ル:ほほう―――ボランティアか・・・
いや、それにしてもだな、そいつを売り物に出しておいて、成功をした例は少ないというぞ。
ブ:ご心配頂かれずとも―――。
ですが、事業主(オーナー)の人柄に惚れ込んで、その日のうちに契約を交わし、
私の別荘の城を抵当に入れて、その人の代わりに私がそこの運営を任されているのです。
・・・いかがです―――もしよろしければ、あなた方も融資してみては・・・
サ:ブリジット―――ここは営業周りの場ではありませんぞ。
ブ:それは失礼―――ですが、私達の事業を引き合いに出されたもので、つい・・・ね。
〔あの事件―――いや、事件というにはおこがましい出来事・・・
<シャンバラ商会襲撃未遂事件>・・・そう、米の残党組であるカレン率いる部隊が、
いわばほうほうの体(てい)で退き、その行方を晦ませた事は、すぐに各国の情報部によって広まり、
すぐさま<商会>の全容が洗われたのです。
すると―――そこには、この“会”の一員でもあるブリジットが名を連ね、
しかもその運営を事実上任されていた・・・
そのことを詰(なじ)ってみれば、彼女はしれとしたままで応答をし、
剰(あまつさ)え“営業活動”を―――と、云ったことに、
上手くはぐらかされた感も否めないとした“会”のメンバー達は、呆れ返るのですが・・・
まださらに驚いた事には―――・・・〕
ブ:ですが―――私の違約は最早明白です。
そのことに関しては二の句も告げられませんが・・・カレンに公言してしまった手前もある。
・・・と、云うわけで―――甚だ志半ばで口惜しい感も否めませんが、
この栄誉ある会を、脱退させていただきたいと思います。
〔ブリジットの犯した“違約”―――自分たちの国の情報部ならば、苦もなく=J=なる存在を暴いてみせる・・・
しかし、実際にブリジットがMI−6を動かせた形跡はありませんでした。
ただ・・・そういう 記録 はあった―――と、しても・・・
ブリジットは、女禍が=J=であると確信したその時より、こんなばかげた事には意味はないとばかりに記録の改ざんをし、
自分が調査の任を預かっている間は、女禍には何者も近寄らせない態勢を作っていたのです。〕