≪三節;迷いの子猫≫
〔それからは―――両者にらみ合ったままピクリとも動かないまま・・・
しかし、この場にいたのは、互いを強敵と認め合っている者以外に、
明らかに場違いであると感じ始めたこの者が・・・〕
カ:(ああ―――あ、ああ・・・ち、違う・・・わ、私たちといる次元が・・・明らかに!!
わ、私は―――? なぜこんなところにいる・・・??
これでは・・・獅子と虎が、己の生と死を賭けて死闘を演じようとしているときに、
迷い出てきてしまった子猫ではないか―――!!?)
〔今にしてようやく―――自分はこの死闘の舞台に上がることを、赦されていない者だと気付きました。
そう・・・出番がないのに、出たがる舞台役者ほど、迷惑なものはいない・・・
ようやく、そのことに気付いたのです。
でも・・・足が―――身体が云うことを利きませんでした。
それは、このプロテクトスーツが故障したから?
いえ・・・そうではなく、カレンは二人の醸し出す闘気に中(あ)てられ、
思考中枢が麻痺してしまい、唯一の手段でもある“逃げる”機会をも逃してしまったのです。
しかも―――間の悪いことに、ここでラゼッタがカレンに気付いてしまい・・・〕
ラ:―――君? ここで何をしている!さっさとここから・・・
――――ズ ガガガ・・・!
ラ:う・ぐぅっ―――!!
ビ:フッ・・・何を余所見をしている。
目の前にいる私を無視し・・・(チラ) あのような細かき者に情けをかけてやるなど・・・
この私を、よほどに格下と見ているということか。
ならば・・・それがそもそもの間違いだということを思い知らせてやる!!
ド ゴォ!!
ラ:フリが大きすぎる・・・渾身の力を込めて、早々の決着をつけたいという気持ちも判らなくはないが・・・
そういう攻撃は―――・・・
ビ:躱(かわ)されると、そのリスクもまた大きい・・・判っていますよ―――そのくらいのことは・・・ね。
ラ:・・・大した余裕だな―――
・・・何をしている、さっさとここから立ち去りたまえ―――
それとも、私たちの闘争に巻き込まれて死にたいのか。
カ:ううっ・・・くうぅ―――
〔カレンに気付いてしまい、思わずそちらを向いて忠告をしてしまった―――
そう・・・目の前に敵を見据えておきながら・・・の、この行為は、
ビューネイも見逃すはずもなく、次の瞬間には、ラゼッタのほほを掴みながら地面にこすりつけていたのです。
そして、次の一手―――渾身の力を込め、拳を振り下ろす・・・と、それを察知したラゼッタは身を翻し、
ビューネイの今の行為についてのアドバイスをするのですが、
もちろんこれはカレンを逃がすための時間稼ぎ・・・
けれども、カレンはすでに―――・・・〕
ラ:ちぃ・・・私たちの闘気に中(あ)てられ、身動きもままならないか。
仕方がないな―――(ス・・) これをつけろ・・・。
カ:あっ・・・これは―――?
ラ:一種の気付け薬だ―――私が次に攻撃のアクションを取ったら、すばやくここから離れろ。
心配しなくとも、そのスーツには、君を安全な場所まで運ぶ機能が供えられている。
〔知らなかった・・・私は、祖国を滅ぼした者達に罪を償わせるために、
その者達憎し―――で追いかけていたのに・・・
それが―――命を狙われているというのに、その者達の一人であるとされる、この“ラゼッタ”と呼ばれる女性は、
こうも脆弱な私を労わり、救ってやろう―――ということに、カレンは気付き始めたのです。
では・・・どうして祖国は滅んだ―――?
その事実は、追々カレンは知り行くこととなるのですが、それはまた別の話し―――〕